オカルトというのは、
謎が解明されると途端にショボくなる。
1990年代に話題となった、スカイフィッシュなどは、その代表でしょう。
世界規模で騒がれた、
肉眼では見えないスピードで飛んでいて、カメラで撮影しなければ確認不能の、
ムカデかゲジゲジみたいな、虫のような生物です。
マスコミにやたらと取り上げられ、
結局オチはハエでした!
で消えた未確認生物。
テレビも手の平を返し、ほらやっぱり嘘だった!
とシレッと嘲笑したりする。
世界的な嘘の話に加担したのはお前らだろうが!
と言いたくなります。
スカイフィッシュのネタバレは、
1994年の「ネッシーの写真が捏造だった」
というニュースと時期も近く、
未確認生物全体を否定する風潮を、強めることにもなった気がします。
今回は、スカイフィッシュ騒動を追いながら、
実在の可能性は本当にないのか?
いるのならどんな生物なのか?
いろいろ夢想したいと思っています。
目次
スカイフィッシュの始まりから終わりまで
スカイフィッシュが世界中に知られるようになったのは、1990年代半ばのこと。
前文に書いたように、ネッシー写真の嘘が暴かれた直後になります。
それも、数多いネッシー写真の中の、一枚が嘘だったというものなのですが、
他の証拠の存在も忘れられ、
世界中でネッシーは、デタラメと決めつける空気になった。
UMA界の巨星が堕ち、その穴を埋めるように出てきたのが、
スカイフィッシュなのです。
まずは、その始まりから見ていきましょう。
カメラだけに映る不可解な生物
アメリカ・LA在住のホセ・エスカミーラ氏が、
撮影した映像をコマ送りしていた時、あることに気づきます。
「おかしな生物が飛んでいる」
その生物は、棒状の胴体の側面に、
足、あるいはヒレのようなものがあり、
素早く空を飛んでいたのです。
別に撮影し直した映像にも、やはり同じ生物が映っている。
「UMAだ!」
と映像を公開したのです。
このホセさん、最初の映像もUFOを撮るため、
有名なロズウェルで撮影していたものだそうで、
オカルト素養は高かったのでしょう。
普通の人ならここで「きっと虫だろうな~」
と納得して終わっていましたよ。
さて、
公開すれば反応が世界中から寄せられるのが、
この頃から当たり前になっていたネット。
「私の撮った動画にも同じものが映っている」
ネットとともに、当たり前になっていた、
家庭用ビデオカメラの普及もあったんでしょう。
スカイフィッシュを捉えた映像がどんどん出てくるのです。
そうなるとマスコミも食いついてきます。
スカイフィッシュは、日本のテレビでも紹介され周知されていきます。
ある番組では、わざわざ、スカイフィッシュがよく撮影されるメキシコの洞窟まで出向き、
粘着テープで覆った板を吊り下げて、
高速で飛ぶスカイフィッシュを、くっつけて捕獲しようという、
どう見ても効率の悪そうな計画を実行。
当然失敗。
それでも、
スカイフィッシュ映像は世界各地で撮影され、
スカイフィッシュ、フライングロッドなどと呼ばれるようになります。
スカイフィッシュを見た!
という目撃者も続出。
まとめられたスカイフィッシュの特徴は、こんな感じ。
・大きさは数cmから2m
(最大30mあるという説も)
・胴体は棒状。側面にヒレのようなものがある。
・ヒレを波打たせて時速80~300kmで飛行。
・生息は世界中。家の中でも飛んでいる。
・高速のため肉眼では確認できず、カメラでしか捉えられない。
しかし、考えてみてください。
いくら高速でも、目視できないほどのスピードなの?
バドミントンのシャトルだって、
そのくらいのスピードは出ます。
ヒレを動かして、そんな高速飛行が可能でしょうか?
ヒレを動かす筋肉もなさそうなのに。
どこにでもいるのに、
止まっているスカイフィッシュを誰も見たことがない。
スカイフィッシュにぶつかった人もいない。
壁にぶつかった話も聞かない。
幽霊みたいな嘘臭い生物なのに、大衆にはなぜか受けました。
むしろ、真面目に検証するUMAオタクの方が、
「こんなのいないだろう」と思っていたくらいです。
とにかく、UMAの王座をネッシーから奪った感もあったスカイフィッシュ。
21世紀になると、メッキが剥がれることに。
モーションブラー現象説の登場です。
モーションブラー現象は決定打!
高速で動いている被写体を撮影すると、
動きに沿って、被写体が引き伸ばされますよね。
写真でも起こる現象です。
これが、モーションブラー現象。
スカイフィッシュは、ハエなどの羽虫がカメラの前を横切り、
その航跡が、モーションブラーで引き伸ばされただけだ!
というわけ。
実際に黒の背景で、飛ぶハエをカメラで撮ると、
誰でも、スカイフィッシュとまったく同じ映像が撮影できちゃう。
これはスマホや家庭用のビデオでも可能ですよ。
なんのことはありません。
胴体は、虫の移動した航跡で、
ヒレのようなものは、羽が開いたり閉じたりした結果なのです。
数秒以下の動きでも、
ハエなどは1秒に100回羽ばたくので、あんな形になる。
スカイフィッシュの名所は、
メキシコの洞窟や、日本の六甲山ですが、
どちらも虫の多そうな場所。
目撃者なんて、
「スカイフィッシュ見ちゃう俺の動体視力すげー」
の勘違いか、ホラ吹きに決まっています。
モーションブラー現象は、
完全にスモーキングガン(動かぬ証拠)でした。
その形だけではありません。
・高速で飛ぶ
(ハエは200km/h近くで飛べます。)
・屋内にもいる。
・ぶつかった人がいない。
・スカイフィッシュの死体もない。
・暗い洞窟でよく見られる……
これで、全ての謎が解けてしまうんですから。
ここまで明快に解明されたUMAも、例がありません。
それに、そうなると、
スカイフィッシュ=ハエである必要もなくなるんじゃないだろうか?
例えばこれは、大量のトンボのスカイフィッシュということになる。
でも、これで片づけてしまうのも面白くない。
スカイフィッシュ実在の可能性は、ないのかも考えてみましょう。
実在の可能性を探る!プラズマ生命体はどうだろう?
スカイフィッシュの正体については、別な意見もあります。
1つは、新種の節足動物ではないか?
というもの。
カンブリア紀に栄えた、
海棲のアノマロカリスが、空を飛べるように進化したという奇説もありました。
しかし、前項で書いたように、スカイフィッシュには飛べるような羽もなく、
羽を動かす筋肉もない。
現実的に飛行が無理。
では視点を変えて、“飛んでいる”ではなく、
“浮いている”と考えてはどうでしょう?
そこで、もう1つのプラズマ説は、
ちょっと興味深いです。
プラズマは「個体、液体、気体」とは別の第4の物質で、
気体が過熱されて、本来セットの原子核と電子が分離して、
勝手に飛び回っている状態です。
形があるような、ないような、雷やオーロラなどがそれに当たります。
つまり、自然界では時々見られるもの。
ふわふわ浮く火の玉(火球現象)が、
プラズマの実験で作れることもわかっています。
このプラズマは、見えるけれど実体がない。
レーダーには映るのに、その場に行っても何もないという、幽霊のような物質。
スカイフィッシュに似ていると思いませんか?
上空を漂うプラズマ生命体クリッター!
という、UMAの話も昔からあるんです。
<クリッターについて、もうちょっと詳しく>
スカイフィッシュがプラズマ生命体だとしたら、
高速飛行や死骸がないこと、どこにでも現れて人に気づかれないことなど、
全部説明がつきます。
太古の地球――
海に生命体が誕生するよりも前に、
不安定な大気中でプラズマが発生し、何かの拍子に命を持ち始める。
「それ」は40億年も空を浮遊していたが、
高速移動の幽霊じみた生物で、人目には触れない。
現代になって、やっと機械の目で捉えられるようになった……。
ちょっと飛躍した空想ですかね?
欠点は、
プラズマ生命体が未だ確認されておらず、
机上の空論に過ぎないということでしょう。
生命体でなくても、
単にプラズマ現象が、生き物のように見えた結果かもしれません。
スカイフィッシュは、ほぼモーションブラー現象で結論づいています。
でも、もっと掘り下げてゆけば、意外な真相に辿りつくかもです。
マスコミが提示する謎や回答に振り回されず、
自分なりのスカイフィッシュを夢想したり、
理論構築することも、
未知生物の面白さだと僕は思うのですよ。
正体はハエで決まり?プラズマ説は~まとめ~
UMAと言いながら、
物理的な実在感がないスカイフィッシュ。
スターの座にいたのは10年足らず。
モーションブラー現象とオチがついて、
今では見向きもされない「あの人は今」的存在。
大衆というのは身勝手なものです。
でも、スカイフィッシュが、
まったくニュータイプの生物として登場したことの意味は、
小さくないと思います。
人間は、こんな生物も空想できるのです。
虫という結論で決まりでしょうが、
誰もが、スカイフィッシュという不思議なものに、想像力を刺激されたからこそ、
世界的に話題となったのでしょう。
今でも、スカイフィッシュが色々な作品に出てくるのは、
その証拠じゃないですかね?
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