パラポネラという生き物がいます。
人気漫画にも出てきたので、一部では知られているかもですが、
ほとんどは知らないのではないでしょうか?
生き物に詳しい自信がある僕も、
???でした。
「なんだこのピンポンパンみたいな名前は?」
って感じ。
ただ、別な名前では昔から知っていました。
弾丸アリ!
そう、パラポネラはアリの一種なのです。
どんなアリなのか?
弾丸アリですからね。
名前からも相当な特攻野郎だと思いませんか?
事実、パラポネラはとても危険なアリ。
最強の昆虫との呼び声も高い。
あの凶悪進撃部隊・軍隊アリさえ、道を譲ってしまうといわれます。
そう聞くと、パラポネラは本当にそこまで強いのか気になりますよね。
その強さは?
どのように人間と関わっているの?
見ていきましょう。
目次
パラポネラは軍隊アリより強いのか?
パラポネラは、日本語でサシハリアリと呼ばれるようです。
僕は、この名も初めて聞きました。
「パラポネラ」はサシハリアリ属の総称で、
「弾丸アリ」は俗称です。
最初に生態を知り、その後に強さを考えてみましょう。
パラポネラの大きさは、2cmから3cm。
日本の一般的なアリが1cmと考えれば、かなり大きいでしょう。
生息地は、
中南米ニカラグアからパラグアイの間。
湿気のある標高750~1500m辺りの、
低地多雨林の木の根元に巣を作り、主に樹上生活をします。
近頃では、最強の昆虫と定着しています。
最強を謳われていた軍隊アリよりも強いという、新チャンピオンですね。
そう言われるのは、
名前にもなっている「刺し針」が凄いからです。
激痛を起こす毒性の針とは?
パラポネラの特徴はなんといっても、刺されるととんでもなく痛いこと。
「咬まれる」じゃなく、「刺される」に注意です。
お尻に「刺す針」がある。
蜂のような尻針をプスリと刺すアリは、たまにいるのですが、
パラポネラの針には、ポネラトキシンという毒があります。
その毒性が、ペプチド性の神経毒で、とにかく痛い。
刺された相手の神経の、ナトリウムチャンネルに作用して、
伝達を狂わせ、痛みを感じる神経経路を刺激し続ける。
「傷口に塩を塗りつけ続けられる」
と思えばいい。
人間が死亡するような毒性はないのですが、
その痛みたるや、まるで弾丸を撃ちこまれたようだとか。
だから弾丸アリ。
その痛みが24時間続くので、
24時間のアリという悪名もあるのです。
もっとも、24時間というのはオーバーで、実際は4~6時間くらいだそう。
でも、そんな激痛ですから、4時間でも丸一日に感じますよ。
あまりの痛みで、人間でも気を失ったり、
錯乱状態になるといいます。
昆虫や小動物なら、軽く死ねるくらいの苦痛でしょう。
パラポネラの毒は、敵の撃退が目的。
相手を痛い目に遭わすために精製した毒なので、痛みがスゴイわけです。
もちろん、パラポネラは咬むこともあります。
そのとき、顎から「ギーーギーー」と音を出して敵を威嚇。
時には、樹上から下を通る者をめがけて、音を出しながら降ってくることも。
3cmの、すごい針を持ったアリの雨……
悲鳴をあげちゃいますね。
こうして見ると、
咬むだけの軍隊アリより、二刀流のパラポネラが強そうですね。
これは数字でも証明されています。
軍隊アリを遥かに超える攻撃力!
シュミットという昆虫学者が、
自ら百種以上の昆虫に刺されて、咬まれて作った、
疼痛指数ランキングというのがあります。
そのランキングがこちら!
シュミット指数と呼ばれ、けっこう有名です。
学者も体張ってますね。
好きでやっているんだったら変態です。
指数は痛みの度合を、0~4の5段階で分類。
数字が大きいほど、痛いです。
それによると、
一時話題になったヒアリの疼痛指数は1.2。
ミツバチ、スズメバチの一種が2.0。
大型のベッコウバチが4.0。
そして、パラポネラが4.0+で、堂々のトップなのです。
シュミット氏曰く、
「刺されて即座に引き起こされる、純粋で強烈で明確な激痛」
「かかとに大釘を打ち込んで、火の上を歩いているような痛み」
なんだとか。
表現がぶっ飛んでいて想像できないんですが、
超激痛なのは伝わるよ、シュミットさん。
かかとに大釘は、絶対に大げさだと思うけど。
軍隊アリも大きな牙があり、咬む力は相当なもの。
軍隊アリの指数は確認できなかったのですが、
スズメバチ以上ってことはないでしょう。
たぶん、ヒアリと同程度。
数字でもパラポネラの圧勝ですね。
どうです?
最強の昆虫と呼ぶに、ふさわしいじゃありませんか!
しかし、強さというのはもっと複合的なもの。
次は、パラポネラが本当に最強なのか考えてみましょう。
パラポネラは最強の昆虫といえない?
パラポネラは、たしかに危険な毒性の針を持っています。
与える苦痛は昆虫一でしょう。
でも、それで強いといえるでしょうか?
考えてみてください。
パラポネラは「刺されたら最高に痛い昆虫」
なのは証明されている。
でもそれだけです。
人間を襲って死亡させたとか、他の生き物を皆殺ししたという話はありません。
パラポネラは肉も食べますが、主食は樹液。
特に攻撃的でもない。
激痛を与える毒性の針や、音を出す大顎も、
防衛のためのもの。
その常識外れな激痛が知られ、
「軍隊アリも怖れる最強の昆虫」
とされているだけで、実際はほとんど被害がないのです。
好戦的な軍隊アリ、
スズメバチのほうがずっと危険でしょう。
「軍隊アリがパラポネラを避ける」
というのも事実とはいえません。
軍隊アリにも大きいのがいますが、
大体は1.5cmでパラポネラの半分。
大きいから避けるに過ぎません。
群れであれば、パラポネラだろうがなんだろうが、踏み潰して進むでしょう。
パラポネラは、最強の針を持つ昆虫ですが、
最強の昆虫とはいえないと思います。
強力な武器を持っているだけで、近づかなければ大丈夫。
人間に向かってくるゴキブリのほうが脅威ですよ。
しかし、その強力な針に、あえて刺される儀式があるのをご存知でしょうか?
パラポネラを用いた恐怖の儀式
「痛みに耐えてこそ大人になれる」
これは、普遍的な価値観なのかもしれません。
アマゾンには、
パラポネラを成人の儀式に利用する部族がいます。
その方法は過酷極まるものです。
まず、村の長老たちが、
パラポネラの巣で、ある薬草を使い100匹ほど眠らせて捕まえます。
眠ったパラポネラを編み込んで手袋を作ります。
その際、手袋の内側に尻が向くようにします。
もう予想できちゃいますかね。
儀式を行う男子が、その手袋をつけるのです。
やがてパラポネラが目を覚まします。
寝起きで気が立っている。
で、手をプスリと刺すんですね。
保護として、手に炭を塗ることは許されているそうですが、
なんの役に立つのやら。
<手袋作りと儀式の様子>
この時、声を上げたり、涙を流すのは禁止。
破れば、最初からやり直さないといけません。
そのまま、約10分我慢。
究極の根性焼きみたいなものですかね。
儀式は12歳になると行われ、大人になっても継続的にやります。
その回数は20回を超えるらしい。
そうやって、
常に痛みに動じない部族の戦士であることを、証明し続けるのだそうです。
想像できますか?
かかとに釘打って、火の上を歩くような痛みの100連発ですよ。
それを生涯に20回!
時々、文明人がこの儀式を取材し、
「実際にチャレンジ!」みたいなことをやるそうですが、
あまりの痛みから、数秒で泣き叫び、卒倒するといいます。
そのまま病院に運ばれることもある。
手は腫れあがり、震えが止まらず、
声も出ないレベルの苦痛だとか。
日本の成人式でも、これを導入したら暴れるやつもいなくなるだろうに。
「戦士として認められたい方は、暴れてアピールして下さ~い。」
と呼びかけて・・・
「よしっ!」
「これでお前も一人前の戦士だっ!」
「ズボッ」
って感じに。
ニュースでも明るい話題として、
戦士の誕生を祝えるし。
エッ、そんなの無理・・・
パラポネラは日本にいないから無理ですって?
それがそうでもないんですよ。
パラポネラは日本にもいるか
南米からの、輸入木材などに混じって、
パラポネラが日本に入ってくることがあります。
ヒアリもそうした経路で侵入し、日本で繁殖しています。
パラポネラで同じことが起きないと、誰が言えるでしょう。
今のところ、パラポネラの侵入はあっても、繁殖は確認されていません。
日本に定着することはないと考えられています。
まずは安心ですね。
しかし、パラポネラは現時点で、
輸入禁止の特定外来種となっていません。
飼育しようが輸入しようが、合法ってこと。
多様なペット産業ですから、日本で増えない保証はない。
パラポネラと出会ったらどうするか?
もし1匹でも、
3cmという大きさなので、すぐ気づくでしょう。
群れでいることは、さすがにないと思われます。
見つけたら針に注意し、すみやかに潰してください。
温暖化ですから、即処分に越したことはありません。
万一、日本でパラポネラが増えたら、えらいことですからね。
信じがたい激痛、味わいたくないでしょ。
激痛を与える毒性パラポネラ!人類とっては最恐~まとめ~
「最強の昆虫」
とされるパラポネラで、怖ろしいのは刺し針でした。
痛めることが目的の毒性で、始末が悪い。
超激痛の刺し針攻撃、
という芸当ひとつで、最強扱いされています。
凶暴な軍隊アリより強いか?
といえば疑問ですね。
でも、痛い昆虫なのは間違いない。
儀式に使われることを見ても、
それは「神ってる痛み」なのでしょう。
人智を超えた痛みというか、神話級の痛みというか。
パラポネラが、
そこまでの刺し針をどうして持ったのかは謎です。
研究が進めば、神の意志みたいのが明らかになるかもしれないですね。
関連記事