呑べえの僕はカワウソ(獺)と聞くと、
山口の酒『獺祭』(だっさい)をつい思い浮かべてしまう。
カワウソには獲った魚を並べる習性があり、
その様子が「祭りの出店」のようだから獺祭。
普段使う機会はありませんが、
実際に存在する言葉なんですよ。
今回は銘酒・獺祭の美味しさを皆さんに……
ではなく、ニホンカワウソのお話です。
「ニホンカワウソっていうくらいだから、
日本のカワウソってことだね」
そう、カワウソは北海道から九州まで、
日本のどこででも、普通に見られた動物だってご存知でしたか?
近頃は愛玩動物扱いのカワウソですが、かつては日本の河川にいくらでもいて、
現在は絶滅したとされています。
絶滅種に指定されたのは2012年。
「最近だ。それなら生き残りがいるのでは?」
と考えたくなりますよね。
実は、ニホンカワウソらしい動物の目撃は今もあるんです!
これまでも、いっぱいありましたよね。
それらの審議と、生存の可能性について迫っていきます。
目次
二ホンカワウソは生き残っているのか?目撃情報と可能性
カワウソはオセアニアと南極以外の、どこの大陸にもいる動物です。
アジアにいるのがユーラシアカワウソで、
ニホンカワウソはその亜種。
北海道にいたカワウソは、さらにニホンカワウソの亜種です。
そして、この2つをまとめてニホンカワウソと呼んでいます。
明治以降、乱獲と近代化による生息地の減少で、数がどんどん減っていきました。
戦後はまだ各地で生息していましたが、
昭和30年頃には四国でしか見られないようになり、
その四国でも、高知で昭和54年を最後に目撃がストップ。
その後は、昭和61年に一体のニホンカワウソの亡骸が発見されたという記録があるだけで、
それっきりです。
で、「ニホンカワウソは絶滅した」と見なされているのですが、
なんたってつい最近までいた動物。
昭和生まれがまだまだ健在なのだから、カワウソだって……
次項で挙げるように、目撃は現在も時々報告されていて、生き残りの期待値は高いのです!
近年にも目撃されている!
時代が平成に移ってからも、カワウソ生息の痕跡は日本中であります。
・平成元年には北海道旭川でカワウソの死体発見
(調査でユーラシアカワウソだった)
・同元年、高知でカワウソのものらしい足跡が見つかる
・平成9年、北海道釧路近郊でカワウソと思われる動物の目撃
・平成21年、高知で目撃
・平成29年、長崎県対馬でカワウソが撮影される
・平成30年、栃木県那須でニホンカワウソの目撃が相次ぐ
他に、公的な記録にはなっていませんが、
山で仕事をする人や、渓流釣りをする人が、
「カワウソ見た」とか、カワウソの足跡や糞があったという話もよくあります。
「こりゃいるかも」と期待させるじゃありませんか!
でも、生存の可能性は本当に高いんでしょうか?
生き残っている確率は?
目撃情報を並べてみると、ニホンカワウソである決定打がないことも確かです。
ユーラシアカワウソは朝鮮半島にはいますし、
サハリンにも、北海道のカワウソの亜種とされるカワウソが生息しています。
泳ぎの上手いカワウソですから、対馬や北海道なら決して渡れない距離でもない。
その可能性を示唆する報道もされています。
ユーチューブで公開されてたんで、下に貼っておきました。
画質が良くないんだけど、内容としてはみる価値ありです。
テレビ局自身が公表しているものなので、共有しても大丈夫なはず・・
意味もなく、ちょっと不安だけどね。
それがこれ・・
平成29年の対馬の事例も、撮影されたことは決定的な証拠なのですが、
朝鮮半島から渡ってきたユーラシアカワウソらしいと研究者は言います。
話題になり、テレビで見た記憶が残っている方もいるでしょう。
こんな風に報道されました。
他にもありましたね・・
テレビ局は二ホンカワウソに、そんなにも力を入れているのか?
また、日本にはカワウソと似ているイタチやテンがいます。
そしてアメリカのミンク。
毛皮を得るのに、日本でも昔は飼われていたんですよ。
僕が子供の頃、近所にけっこう誰でも出入りできるミンクの飼育場があって、
ケージに突っ込んだ指を咬まれて、血豆を作った経験があるのですが、
この憎きミンクがカワウソとそっくり。
飼育所から逃げ出したミンクが日本で繁殖していたりして、
カワウソと間違えられそうな動物は多い。
栃木で、
最近にわかに目撃が増えているニホンカワウソも、ミンクの可能性が高いのだとか。
こうしてみると、ニホンカワウソの生存は難しそうです。
日本にカワウソがいても、それは他所から移動してきた個体でしょう。
それなら、トキみたいに他国から持ち込んで、
繁殖させて復活という方法はとれないものなんですかね?
復活計画
ニホンカワウソは日本固有なのですが、大陸のユーラシアカワウソと極めて近い。
北海道にいたカワウソの近種もサハリンにいます。
特にサハリンのカワウソは、
北海道産ニホンカワウソの亜種と見られ、兄弟みたいなもの。
とすれば、
それらを日本に放せば、日本で再びカワウソが見られるようになるはず!
そんな計画もないことはありません。
賛否はあるでしょうが、僕は個人的に反対です。
以下に問題点を挙げてみましょう。
復活は問題もある
トキの場合、元々東アジア全体にいたものが日本で滅び、
中国だけで生き残っていたものを輸入しました。
トキは学名が「Nipponia Nippon」。
サムライジャパンみたいな命名ですが、
単にシーボルト先生が、日本のトキをヨーロッパに紹介したので、
日本代表っぽい学名になっただけです。
こんな学名の鳥が「日本にいないでは面子が立たない」とでも思ったのか、
大々的に復活プロジェクトが行われたのですが、輸入した中国のトキも、
同種のNipponia Nipponなのです。
ニホンカワウソの学名は「Lutra Nippon」。
日本固有のカワウソで、
大陸やサハリンのカワウソは違います。
これでは、近種というだけの外来種を持ち込むだけですよ。
他所のカワウソが、勝手に渡日して住み着いたならまだしも、
人為的にやることではありません。
それにニホンカワウソが絶滅したのは、
日本の河川が、汚染や食料の減少によって、
カワウソを育めなくなったことが原因です。
現在は環境保護の意識も高まり、カワウソも生きてゆけるかもしれません。
でも、カワウソの抜けた生態系が出来上がっているとしたら、
カワウソの再登場で、別な生物が絶滅することも考えられます。
カワウソは日本では古くから親しまれてきましたが、
復活には問題アリと僕は思います。
動物園や水族館で、
ユーラシアカワウソやコツメカワウソを見るほうがいいでしょうね。
特にコツメカワウソは人気急上昇です。
人気急上昇中!コツメカワウソ
最近注目なのがコツメカワウソ。
体長が50~60cmと、
ニホンカワウソ(体長80~100cm)より小柄で、人にもよく懐くので、ファンも続出中。
インドから東南アジアに生息していて、好奇心が強く、頭もいい。
人間が躾けて、鵜飼いみたいに漁をさせることもあります。
コツメカワウソはペットにもできますが、飼育は簡単じゃありません。
泳ぐ場所付きの、広い飼育環境が必要です。
値段も50万円以上しますし、
密輸も多いので違法になる恐れもある。
可愛いアヘ顔に釣られて、安易に飼っちゃわないほうがいいです。
ニホンカワウソが滅んだように、
ユーラシアカワウソもコツメカワウソも数が減っています。
保護の意味でも動物園、水族館に任すほうがいいですよ。
公共施設なら仲間もいっぱいいますしね。
(個人では何匹も買えません)
個人的には、カワウソは豊かな自然の中で、
自由に暮らしてほしい動物だと思っているんですが。
目撃情報の審議と生存の可能性~まとめ~
ニホンカワウソは、初めて絶滅した、昭和時代に生存していた動物なのだそうです。
昭和は戦争と復興の時代。
乱獲の理由も、毛皮が温かく、
寒い大陸で戦う兵士の服に利用されたためで、
戦後の環境破壊でトドメを刺されたわけ。
ニホンカワウソは、日本のスクラップ&ビルドの犠牲者といえるかもしれません。
目撃は頻繁ですが、生き残っている可能性はかなり低いでしょうね。
最後にニホンカワウソが確認された四国では、
今も生存調査が活発だそうです。
もし発見できたら、今度こそきちんと守ってほしいものです。