皆さんはミツクリザメ(ゴブリンシャーク)
をご存知でしょうか?
マイナーなサメですが、ダイオウグソクムシなんぞが人気となる深海ブームの昨今、
ドラクエやアビスリウムなどの人気ゲームにも登場するくらいなので、
聞いたことあるという人も少なくないでしょう。
僕がミツクリザメを知ったのはずいぶん前で、
その常識外れの姿で記憶には残っていたのですが、
その頃はほとんどなにもわかっていない状態でした。
最近はやっと研究も進み、いくらか生態も解明されているようです。
今回は奇妙なミツクリザメの謎に迫っていこうと思います。
ミツクリザメってどんなサメ?
ネズミザメ科のミツクリザメは、深海に生息するアビスアニマル。
最大6mくらいにもなるそうですが、
水揚げされるのはほとんどが3m以下だそうです。
真っ先に目につくのは、へら状に突出した吻。
前方にビヨーンと伸ばした庇状の吻が、
気合いの入りすぎたリーゼントみたいな、
変てこ生物です。
そして、くちばしのような形の口。
普段この口は引っ込んでいるのですが、
水揚げされると圧の関係で出てきちゃうんです。
引っ込んでいるとミツクリザメも可愛げがあるのですが、
出ちゃうとすごい形相なのです。
わりと美形なのに、口を開けると残念な人っていますよね?
そんなものが深海から揚がってきたら、
屈強な漁師さんでもガクブルでしょう。
その顔があまりにも醜いので、
英語でゴブリン(悪魔)シャーク
と呼ばれています。
とにかく長い吻と、エイリアンみたいな口が、
インパクトあるミツクリザメ。
どうしてこんな面相になってしまったのでしょう?
どうしてあんな姿になったか
ミツクリザメは怖い顔ですが、獰猛ではありません。
いや、むしろ弱っちいサメなのです。
血管が透けて見えるほどの柔肌、
速く泳げない貧弱なヒレ……。
他のサメにイメージされる「サメ肌の特攻野郎」とはかなりかけ離れています。
弱者は別の武器を持たねばなりません。
ロレンチーニの拡大
サメの頭部はロレンチーニ器官といい、
微弱な電流も感知できるようになっています。
獲物を見つけるためのセンサーですね。
大きければ大きいほど、捜索の範囲も広げられるわけです。
トンカチみたいな頭をしたシュモクザメは、
横に広げた結果なのですが、
ミツクリザメは前方に広げたために、
庇(ひさし)みたいになったようです。
見た目の悪さよりは実用的を選んだ格好ですね。
飛び出す口
さらに泳ぐのが遅いため、
口だけ前に飛ばしてしまおうという、
荒業まで編み出します。
サメ類はみんな顎を出せるのですが、
ミツクリザメはその距離が圧倒的に長い。
そのスピードは秒速3mで、
他のサメの2~7倍の射程距離らしい。
追いかけられている獲物からすれば、
いきなり間合いを詰められてパクリと食べられることになります。
僕の知る限り、一番憧れない飛び道具だ……。
こんな異質の能力を持ったミツクリザメは、
なぜか日本でよく捕獲されています。
日本は深海サメの聖地
ミツクリザメは世界中で見つかっているのですが、
捕獲されるほとんどは駿河湾~相模湾~東京湾。
水深300~1,200mに生息するというミツクリザメが、
時には30mくらいにまで上昇してきて、
ダイバーや釣り人の目に留まることもしばしば。
日本はミツクリザメの聖地なのかと思えるほどで、
ミツクリザメを1898年に初めて確認したのも、
研究がもっとも進んでいるのも我が日本です。
どうして日本でだけ、これほど見られるのでしょうか?
東京湾から駿河湾にかけての海域が、
世界でも珍しい、都市部に近い深海であることが考えられます。
大都市圏の海が2,000mも深いなんて、
他では見られない自然条件なんだとか。
適度に汚水が流れ込む海のため、
深海にまで養分が達し、深海魚も棲みやすいってわけ。
メガマウスやラブカといった希少なサメも、これらの海域で見られるのです。
ただし、一般人が生きたミツクリザメを見るのはとても難しいでしょう。
捕獲されたものが水族館に展示されることはありますが、
数日で死んでしまうからです。
運よく、生きているうちのタイミングで、
水族館に行けるかどうかですね。
しながわ水族館や、東急油壷マリンパークなどでは、ミツクリザメのはく製が見られます。
ミツクリザメの特徴~まとめ~
ミツクリザメ天国の日本が挑戦すべきなのは、
長期飼育になるでしょうか。
成功すれば、水族館でも普通に見られると思います。
個人的には悪魔は飼い慣らさずに、
深淵で謎の存在であり続けるってのも、悪くないと思っているんですが。