ヘリコプリオンが今、話題です。
「ヘリコプターに乗ったエヴァンゲリオン」
じゃないですよ。
絶滅した、古代ザメのひとつです。
古代ザメといえば、有名なのはメガロドン。
15mの巨大ザメですが、
ヘリコプリオンは、もっと大きかったかもしれないのです。
「超巨大ザメかぁ」
とロマン溢れますよね。
それだけじゃありません。
ヘリコプリオンは、とにかく変なサメ。
大きさよりも、むしろ異様な姿が話題の的なんです。
こんな生物がいるのか?
という突き抜けたデザイン。
僕も初めてヘリコプリオンを知ったときは、たまげました。
話題になるのは必然でしょう。
しかし、ヘリコプリオンは現在も謎のサメ。
大きさ、デザインにも諸説入り乱れ、正体不明なところも魅力的。
どんなサメなのか興味をそそられませんか?
ヘリコプリオンの最新情報をまとめました。
目次
ヘリコプリオンはメガロドンより大きいか?
ヘリコプリオンは、2億8000万年前に登場しました。
想像図ですが、こんなサメです。
化石は、100年以上前に見つかっています。
ここで少しだけ、サメの化石について説明させてください。
サメは4億年前からいる、古いタイプの魚類。
エイなどと共に、軟骨魚類に分類されています。
ゴリゴリした歯応えの、焼き鳥のナンコツと思えばいいです。
つまり、柔らかい骨の魚。
サメは強そうに見えて、骨が貧弱なのです。
骨が弱いということは、化石が残りにくいということ。
サメの骨格で固いのは歯くらい。
実は、ヘリコプリオンにしても、メガロドンにしても、
古代ザメは歯しか出てこない。
歯の化石から、全体像を想像するわけです。
大きさも歯から算出されます。
ヘリコプリオンの大きさは?
ヘリコプリオンは、この歯の化石が異常でした。
発見者も「なんやねん?」だったでしょう。
この歯については後述するとして、そのサイズからヘリコプリオンは3~5m。
大きくても7.5mと割り出されます。
あれ?
15mのメガロドンより、大きいんじゃなかったの?
と思われたでしょうか?
ヘリコプリオンに限っては、それほど大きさはないようなのです。
では、どうしてメガロドン以上と言われるのか。
30m超えのパラヘリコプリオンとは?
その後、ヘリコプリオンに似た歯がいくつか見つかっています。
どうやら、ヘリコプリオン仕様のサメが数種いたらしい。
ロシアのウラル山脈でも、発掘されました。
その歯は、ヘリコプリオンのものにそっくりで、一段と大きかったのです。
「ヘリコプリオンに似ている」
そんな理由で、
その歯の持ち主はパラヘリコプリオンと名付けられます。
ちなみにParaは接頭語で、
「~に似る」「疑似の」「偽の」という意味。
その歯の大きさが、なんと25cm!
余談ですが、僕が記事を書きながら飲んでいた、
500mlのペットボトルの高さを測ってみたら、大体20cmでした。
なんとなく歯の大きさ、イメージできますか?
しかも、その歯は先が欠けていた。
完全なら30cmくらいか?
15mだの、20mだのいわれるメガロドンの歯は15cm。
あのホホジロザメ(5~6m)の歯でも、たった5cm程度なんですよ。
ことさら、大きい歯を持つパラヘリコプリオン。
「最低でも30m」
「それ以上の怪物でなければ、こんなデカい歯はあり得ない」
というわけ。
しかし、30m超えの大ザメなんて本当にいるんでしょうか?
30mは怪しい
「30m以上!」
「クジラや恐竜を超える!」
デカい数字は、注目を集めるもの。
こうして、
「パラヘリコプリオンはメガロドンより大きい」
「ヘリコプリオンは巨大ザメ」
と話が広まっちゃているんですね。
でも、これにはトリックがあります。
例えば、
牙が異様に大きいサーベルタイガー。
「あの牙がライオンの10倍もあるから、サーベルタイガーは20mある」
とはなりません。
「歯が大きい」と「体長が大きい」は違うのです。
さらに、ヘリコプリオンは特殊な歯。
サーベルタイガーが地味に見えるような、
トチ狂った歯なのです。
歯の30m以上というのも、
学者ではなく化石コレクターの私見。
現在、パラヘリコプリオンの体長も、
3~4mだったとされています。
ずいぶん縮んじゃった。
もちろん、
巨大だった可能性もゼロではないので、
今後の新発見に期待したいところです。
さて、何度も言っているヘリコプリオンの歯。
よく、回転のこぎりに例えられます。
その、ぶっ飛んだ歯を考察してみましょう。
ヘリコプリオンの歯
ヘリコプリオンの奇妙な歯。
最初は、アンモナイトの化石だと思われていました。
歯列が、渦巻き状になっていたからです。
つまり、顎が伸びて、内側にどんどん巻かれていった。
結果、先頭の歯が内側に入り、何重にもなって、外側に奥の歯がくるという形態。
さしずめ、歯の蚊取り線香。
たしかに巻貝みたい。
ヘリコプリオンも、
ギリシャ語で「らせん」+「のこぎり」の意味です。
こんな歯になるのは、理由があります。
らせん状になる理由
どうしてこんな歯に?
誰もが疑問に思うでしょう。
サメは、一生歯が生える生物で、いくら抜け落ちても新しいのが生えてきます。
スキッ歯なんて無縁。
ところが、ヘリコプリオンは歯が抜けないのです。
古い歯が抜けないと、新しい歯は生やせない。
そこで、旧歯を押し出して、新歯に入れ替える。
その繰り返しで、渦を巻いていくという工程。
渦巻きの中心にいけばいくほど、古い歯ってこと。
同種の化石は、
北米、オーストラリア、ロシア、中国、日本でも見つかっているんです。
ヘリコプリオンが、広く生息していたのは分かりました。
しかし、肝心なことがわからない。
ヘリコプリオンがどんな姿だったのか?
サメは歯しか残さないと書きましたよね。
歯から全体を考えるしかない。
ところが、ヘリコプリオンの歯は前代未聞。
参考になる、既知生物もいません。
問題はひとつ。
らせんの歯が、「どこに」「どんなふうに」付いていたのか。
この謎が解けないと、形が分からないじゃありませんか!
どんなサメだったのか?
最初に出たのは、上顎説。
上顎がめくれて、鼻面の上に、
気合の入ったリーゼントみたいに巻かれていたというもの。
当然、次に出たのは下顎説。
逆に、下の歯が腹側に向かって巻かれたスタイル。
いやぁ……ちょっとないわ~。
なんの意味があって、そんな邪魔くさい進化をするのか。
さらに、
「これ、歯じゃないんじゃネ」
なんて意見も出る。
背中やひれに装着していた、円月輪みたいな武器、
あるいは、棘鎧のような装甲ではないか。
そんなサメ、カッコよすぎるでしょうよ。
形がわからないと思って、言いたい放題です。
最近の説だと、喉元にあったというのが有力です。
歯の形状から、
ヘリコプリオンは、アンモナイトをバリバリ食べていたらしい。
外側にあっても、あまり役立ちそうにない。
そこで、短い下顎の先、あるいは少し奥に、
ピザカッターみたいな、らせん状の歯があり、
アンモナイトを噛み砕いていたというのです。
最新の復元図では、下顎のやや内側に置かれるのが主流。
それでも、僕には違和感が拭えないんですが。
結局、ヘリコプリオンの全体像は今も分からないのです。
なにしろ見たこともない歯ですから。
それが、どこにどんなふうに付いていたかなんて、分かるもんか。
とにかく、
謎だらけの古代ザメ・ヘリコプリオン。
今も学者たちの想像力を刺激し続けているんです。
超巨大説と奇抜な歯!ヘリコプリオンの真相~まとめ~
化石が見つかって、100数十年。
ヘリコプリオンは正体不明のままです。
でも、メガロドンより大きいというのは眉唾ですね。
巨大なら、特殊な部位の進化は、あまり必要ないでしょうし。
らせん状の歯は、目的がさっぱり分かりません。
アンモナイトの殻を割るための進化かもしれませんし、
歯が抜け落ちないので、苦肉の策かもしれない。
かなりのキワモノってことは、間違いないですね。
僕は、サメは完璧な生物だと思っていました。
4億年も、ほとんど変わらなくていい程の完全体だったと。
ヘリコプリオンを見ると、サメも試行錯誤してたんだな~と感じます。