灰色のふわふわの毛に、長い尻尾、顔ほどもある大きな手のひら。
ユキヒョウって、可愛いですよね。
とにかく猫族には珍しい毛の長さがたまりません。
しかし、ご存じでしたか?
ユキヒョウって、ヒョウじゃないんです。
ユキヒョウの特徴、他の豹との違い
ユキヒョウは英語でスノーレパード、
雪豹です。
しかし、大型の猫族の中では、
ヒョウよりトラに近いと言われています。
確かに顔を見ると、どことなくトラっぽくも見えますね。
試しにその血筋を辿って行くと、
大型猫の共通のご先祖さまにたどり着きます。
ご先祖さまは、
もともと中央アジアの高地に住んでいたようです。
その共通のご先祖さまから、
ウンピョウが独立し、
その後ユキヒョウ&トラ一族とヒョウの一族に分かれたと言われています。
簡単に言えば、
ユキヒョウとトラは兄弟、ヒョウはそのいとこにあたります。
(その後ヒョウはさらに分かれ、ヒョウとライオン、ジャガーになりました。)
ユキヒョウとヒョウは住んでいる環境が違います。
ヒョウの一族は、
高地から比較的暖かく、獲物の豊富な地域に下りていき、
徐々に体を大型化させていきました。
ユキヒョウは山に残り、
平均3000~4000m(富士山並み)の高さの生息地を駆け巡るために、
分厚い毛皮と身軽な体を維持しました。
特にあの太い腕と大きな手のひらは、
雪をつかんで崖から滑り落ちないようにするためです。
そして、もう1つ雪山に欠かせないのが、
長くてふかふかの尻尾です。
尻尾の特徴
猫族は尻尾をバランスを取ったり、
方向転換をする時に使います。
また、自分の感情を表現するための器官として、
寒い時には鼻を暖めるマスクやマフラーとしても使います。
さらに尻尾は、
子供をあやすためのおもちゃであり、
遊びたい時の友達であり、
寂しい時のライナスの毛布にもなります。
ユキヒョウの尻尾は体長ほどもあり、
他の猫類と比べると格段に長いのが特徴です。
その長さは、正面を向いて尻尾をくわえても先が余るほど。
空気が薄く、
足場の悪い高地をアップダウンしながら獲物を追いかけるには、
特別に長い尻尾が必要だったのかもしれませんね。
その長さを実感できる、
尻尾をくわえたユキヒョウの写真が、
ネットにアップされています。
世界中で「可愛い!」と評判ですが、
一方で、動物園でしか見られないので、
ストレスが原因ではないかと心配する声もあります。
もちろん動物園でストレスがないはずはないでしょう。
しかし、野生のユキヒョウの映像や観察記録は、
極端に少なく、
狩りやパトロールをしている時以外の生態はまだよく分かっていません。
写真のユキヒョウは毛並みも良く、
穏やかな、可愛い表情をしています。
もしかするとこれは、
動物園にいるからこそ観察することのできた、
ユキヒョウの生態の一つかもしれません。
今後、観察が進んで、
どんな時にくわえたい気分になるのかが分かるかもしれませんね。
もう一つ、
動物園だからこそ聞くことができるのが、
ユキヒョウの鳴き声です。
鳴き声はニャア!
ユキヒョウの鳴き声を聞いたことがありますか?
ユキヒョウは、ヒョウのように「ガオー!」とは鳴きません。
少し濁った「ニャア!」です。
実は「ガオー!」と鳴くのは、
トラとヒョウ・ライオン・ジャガーだけ。
同じ猫族でも、喉の構造上、
ユキヒョウ(とウンピョウ)は猛獣らしい凄みのある声が出せません。
しかし、チーターやヤマネコの仲間も
「ニャア!」なので、ヒョウの一族の方が例外なのかもしれません。
とはいえ、どの猫族も普段はめったに鳴きません。
どうしても言いたい(?)ことがある時にだけ声を上げます。
例えば、口を「う」の字にして、
喉の奥で「おう!おう!」と連続して鳴いていれば、
これは母親が子供を呼ぶ時の声です。
もし、こうやって鳴いていたら、
そのユキヒョウは子供か、そばにはいない親しい誰かを呼んでいるのです。
また、舌をUの字に丸めて「ニャア」に近い声で鳴いていれば、
「お腹空いた~!ごはん食べたい~!」
か、「お母さ~ん!どこ~!」
で、すごく甘えたい気分でいる時です。
ちなみに、舌をUの字に丸めるのは、
哺乳類の赤ちゃん(もちろんヒトも!)が、
授乳の時、乳首をしっかり捉えるための動きです。
ですからこれはおそらくその名残りで、幼児返りしている気分なのでしょう。
ネットにアップされている動画を見ると、
だいたいこの2つのうちどちらかです。
この2つの場面には比較的遭遇しやすいので、
動物園でチャンスを狙ってみるのも楽しいですね。
ユキヒョウのいる動物園
現在ユキヒョウのいる日本の動物園は以下のとおりです。
・円山動物園 (北海道札幌市)
・旭山動物園 (北海道旭川市)
・大森山動物園 (秋田県秋田市)
・多摩動物公園 (東京都日野市)
・群馬サファリパーク(群馬県富岡市)
・浜松市動物園 (静岡県浜松市)
・東山動物園 (愛知県名古屋市)
・王子動物園 (兵庫県神戸市)
・大牟田動物園 (福岡県大牟田市)
このうち、大牟田動物園にいるユキヒョウは、
熊本市から来ています。
熊本地震で猛獣舎が激しく損壊したために、
熊本市動植物園(熊本県熊本市)にいた、
ユキヒョウが緊急避難しているのです。
熊本地震は辛いことでした。
しかし、思いがけない場所でユキヒョウに出会うことは、
熊本地震の影響が今も続いていることの証です。
今回、図らずもユキヒョウは、
熊本地震の使者となりました。
きっかけが何であれ、
きっと「いいご縁」になることでしょう。
同じようにユキヒョウに会ってその可愛さに触れ、
絶滅危惧種であるユキヒョウそのものに興味を持つなら、
遠い中央アジアの国々で起きている問題を知るきっかけになるかもしれません。
ユキヒョウの意外な特徴~まとめ~
ユキヒョウは絶滅危惧種です。
以前は毛皮や漢方薬としてのニーズで乱獲が進んでいましたが、
最近はカシミヤの世界的流行という、
新たなる原因が彼らの生活を脅かしています。
生産者がカシミヤ山羊の放牧地を拡大し、
ユキヒョウや、獲物のアイベックス類の縄張りが侵されているのです。
それだけでなく、
ユキヒョウがカシミヤ山羊を襲い、
害獣として駆除される事態も発生しています。
しかし、生産者の方も、
厳しい土地での生活がかかっていますので、
遠くから、放牧地を広げることの善し悪しを簡単に問うことはできません。
ユキヒョウを知ることは、
野生動物と人間との距離を考えることにも通じるのです。
しかし、です。
まずはユキヒョウに会いに行きましょう。
会った事のある人はもう一度。
そして、またもう一度。
ユキヒョウは、
中央アジアの高山地帯から来た大切なお客さまです。
ユキヒョウがあなたにどんなことを語ってくれるのかは分かりませんが、
まずはユキヒョウに会って、
その存在を感じることが大切なのではないでしょうか。