ウミサソリはサソリの祖先か?3m級のサソリが絶滅した理由

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ある日、とんでもない化石が見つかりました。

 

テニスラケットほどの大きさの、サソリのハサミです。

 

僕らの知るサソリを遥かに凌ぐ、大サソリが過去に存在していたんです。

 

 

サソリというと、小さな殺し屋。

 

怖ろしい毒を持つ生物ですが、

せめてもの救いは、それほど大きくはないことくらいですよね。

 

 

だけど、今回は違いますよ。

 

人間サイズの、バルタン星人のハサミだってもう少し小さいですから。

 

ウミサソリは、地球上に現れたムシではおそらく最大のものでしょう。

 

 

その大きさはもちろん。

生態や絶滅理由も考えてゆきます。

 

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古代の巨大サソリは海にいた

 

ウミサソリはオルドビス紀に登場し、

シルル紀に特に栄えた生物です。

 

その後のデボン紀、ペルム紀まで生き延び、

およそ4億6000年前から2億5000万年前まで、2億年間も生存していました。

 

何気に恐竜よりも長期間っていうのがスゴイ。

 

 

ウミサソリといっても、

生息していたのは陸に近い浅瀬やサンゴ礁、

もしくは淡水域だったようです。

 

 

形体は、確かにサソリかな~。

でもワラジムシとか、本につくシミのようにも見える扁平なムシって感じ。

 

レプリカだけど、こんな見た目です。

 

頭部前方に左右の複眼があり、真ん中にも単眼を持っていました。

 

泳ぐときは背部を下にして泳ぎ、水底を這うこともあったらしい。

 

 

ウミサソリは2億年も生きていただけあって、

種類も豊富。

 

今までに250種ほどが見つかっています。

 

 

大きさは、最大で3mもあったと考えられており、

2m超級のウミサソリも、数種類いたことが分かっています。

 

 

そう、人間よりデカい!

1m~1.5mは当たり前。

 

かと思えば、10~20cm程度の小型ウミサソリも確認されています。

 

小さいのはともかく、3mのサソリですよ。

もうホラーでしかありません!

 

 

この大きさは、同時期に生存した3mのヤスデ、アースロプレウラと並ぶ、

節足動物最大サイズ。

 

当然、当時の生態系の頂点にいた、

凶悪な肉食生物だと考えられてきました。

 

 

しかし最近の研究では、

ハサミも口もそれほど強力ではなく、

小さな生物や、せいぜい軟体動物を餌にしていたと考えられています。

 

食物連鎖の上にいたことは間違いないでしょうが、

外見に似合わず、そこまで凶悪ということもないようですね。

 

毒を持っていたかどうかも不明で、案外平和的な生き物だったかもしれません。

 

 

このウミサソリ、一部は陸に上がることもできたと言います。

 

巨大ウミサソリが、陸を這った跡も見つかっています。

 

 

すると現代のサソリは、陸に上がったウミサソリの子孫に当たるのでしょうか?

 

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ウミサソリはサソリの祖先なのか

 

元々ウミサソリは、カブトガニに近い生物と考えられてきました。

 

体の造りが似ていたからです。

 

 

しかし近年になって、生殖器がクモのそれに近いということで、

カブトガニよりも、クモ、ウデムシ、

ヒヨケムシ、サソリモドキ、ダニなど、

クモガタ類の近種というのが有力です。

 

 

ウミサソリが出現する前のカンブリア紀。

 

三葉虫、アノマロカリスなどの鎧をまとったような節足動物が現れます。

 

 

さらにそこから、

口が横にハサミ状になった鋏角類(クモ、サソリ、カブトガニなどが属する)が登場。

 

そして、カブトガニから枝分かれした後、

ウミサソリとクモガタ類の共通祖先が生まれ、

分かれたと考えられるのです。

 

 

クモガタ類にはサソリも含まれています。

 

それならサソリとも近いわけですが、

ウミサソリとサソリを結びつける決定打がないのも事実。

 

現時点では、

「サソリの祖先かもしれないし、違うかもしれない」

と言うしかありません。

 

 

この辺の甲殻類の進化は複雑に絡み合っていて、なかなか判定しにくいのです。

 

 

一部の学者は「ウミサソリがサソリの祖先」

と考えているものの、今この説はどうも分が悪い。

 

暫定的ではありますが、サソリはウミサソリからではなく、

クモガタ類から分岐したという説が有力視されているからです。

 

僕が思うに、無関係ではないにしろ、サソリとはやや違う生物ではないでしょうか。

 

 

こうして見ると、ウミサソリは長い期間生き続け、陸に上がった初期の生物であり、

陸生節足動物の先駆者となったことが分かります。

 

体も大型で、もっと発展しても良かったのに滅んでしまいました。

 

 

次はウミサソリの絶滅理由を考えてみましょう。

 

 

滅んだ原因

 

3mの大きさで、

最大の節足動物になったウミサソリ。

 

繁栄していた2億年間は、

比較的穏やかな進化時代でした。

 

ウミサソリが現れたオルドビス紀の終わりには、大量絶滅もありましたが、

ウミサソリは生き延び、

その後のシルル紀、デボン紀に栄えます。

 

しかしこの頃には、

ウミサソリの生存を、将来脅かすことになる新しい生物も生まれ始めていました。

 

 

それは魚。

 

 

この新参者は、まだ十数cm程度で、ウミサソリの餌だったかもしれません。

 

しかし、節足動物に負けない機動力や、

多彩に進化する潜在能力を持っています。

 

デボン紀になると、5mを超える甲冑魚なども現れ、海の支配者になりました。

 

 

そうなるとウミサソリも生き辛い。

 

では陸では?

 

これもあまり期待できません。

 

 

ウミサソリは、陸にも上がったというだけで、

そこまで陸生に適応したわけでもない。

 

カヌーを陸に上げても移動が大変になるだけですしね。

 

 

それに、巨大ウミサソリであれば、陸では重力と戦わなければなりません。

 

海で魚に追われるようになり、陸でもたいして動けないのでは逃げ場がない。

 

徐々に衰退してゆきます。

 

 

ここでさらにトドメの一撃が起こるのです。

 

 

P-T境界の大絶滅

 

ウミサソリは衰退しつつも、1億年くらいはなんとかやっていました。

 

だけど、それもついに終わりを迎る。

 

 

今から2億5000万年ほど前の、ペルム紀の終わりになると、

活発な火山活動などが原因で、環境が大きく変わります。

 

これが、地球史上最大といわれる大量絶滅を引き起こした。

 

P-T境界の大絶滅と呼ばれ、

これがカンブリア紀から続いた3億年間の古生代を終わらせたのです。

 

 

この大絶滅では、海洋生物の96%

全体でも9割以上の生物が絶滅したと言います。

 

 

しぶといウミサソリも、さすがにこれは乗り切れませんでした。

 

史上最大の節足動物も、こうして地球から消えてしまったのです。

 

 

その後、ウミサソリがどうなったかは、前述したようによく分かっていません。

 

サソリになったのか、クモになったのか、水生の小生物にでもなったのか。

 

まったく化石だけの、過去の生き物なのかもしれません。

 

 

でも、小さいウミサソリは、少数生き残ったんじゃないかと僕は思います。

 

だって、2億年も生きていたウミサソリですよ。

 

したたかに姿を変えて、今もその血筋を残していることは考えられることです。

 

 

まだ見つかっていないのなら、

その子孫はとんでもなく意外な生物なのかもしれませんね。

 

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サソリの祖先ではないかも?絶滅理由も~まとめ~

 

ウミサソリは一時代を築いた生物です。

 

3mの巨体で水陸を這いまわり、時代の覇王となったのです。

 

 

この時期は、節足動物が海から陸に進出し、昆虫に変わってゆく事件が起こります。

 

 

3mのウミサソリにヤスデ、

70cmのトンボが飛び交うデカムシ時代でした。

 

虫嫌いの人にはおぞましい光景でしょうが。

 

 

大型節足動物は、P-T境界の大絶滅で全滅したとされますが、

ヤスデやトンボは小さくなって今もいます。

 

ウミサソリもきっとどこかに……

とつい考えてしまうんですよ。

 

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