オリバー君はやらせ!ぶっ飛んでいた昭和のメディアの話

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「人間とチンパンジーの混血がいた!?」

なんて報じられたら、あなたはどんな反応をしますか?

 

今なら「バカバカしい」と鼻で笑い、

SNSで「またフェイクかよ」

と叩かれるはず。

 

 

しかし、昭和はテレビが事実を作る時代。

 

そんな時代に来日したのが、

「人の猿の間に生まれた“ヒューマンジー”のオリバー君」

です。

 

50歳より上の世代なら、

「あー、いたいた」

と懐かしいかもしれません。

 

 

当時、知らない人はいないほどの大人気。

いや、物議をかもしたというべきか。

 

良くも悪くも、一世を風靡したんです。

 

 

今回紹介するのはこの「オリバー君」。

 

本当に人と猿の混血なのか?

 

どんな騒動だったのか?

 

中高年には懐かしく、若い読者はあ然とする、

昭和のドンチャン劇です。

 

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ブッ飛びすぎのオリバー騒動

 

1976年(昭和51年)の7月。

アメリカから特別チャーター機に乗って来日した彼。

 

その様子が生中継される。

 

 

 

モーニングをまとって、晩餐会に登場。

 

ハリウッドスターなのか?

 

それがただの猿。

オリバー君でした。

 

 

いや、「ただの猿」じゃない。

なんと、オリバーは人とチンパンジーの混血だという。

 

その名も「ヒューマンジー」。

 

 

あり得ない存在ですよ。

 

類人猿の生き残りか?

 

はたまた雪男の正体か?

 

 

謎の生物がついに日本上陸!

 

衝撃的な触れ込みでやって来た。

 

宿泊した東京メトロ半蔵門駅前のダイヤモンド・ホテルで、

大々的な記者会見も。

 

大勢の記者が猿に会見するというコントのような実話。

 

 

まあ、普通なら「アホらしぃ」となる。

 

だって猿だもん。

 

 

 

でも、オリバー君は本当に猿らしくない猿だったのです。

 

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オリバーはまるで人間だった!

 

ヒューマンジーなんて嘘臭い話。

テレビを盲信する昭和ならではと思うかもしれません。

 

ただ、オリバー君にも、そう信じさせる特徴があったのです。

 

 

 

頭部の体毛が薄く、人間のように見えた。

 

膝を曲げずに二本足で歩けるし、椅子にも上手に座る。

 

ビールを飲んで、タバコをプカプカ。

 

 

人間の女性のヌード写真を見せると、

興奮して勃起までしちゃう。

 

猿が人に発情するなんて普通はない。

 

 

決定的と思われたのは、染色体の数。

 

ヒトは23対の46、チンパンジーは24対48。

オリバーはその中間の47個の染色体だというのです。

 

だから「人と猿の中間種」というわけ。

 

 

 

それをテレビが大々的に煽った。

 

当時のテレビは娯楽の王様。

 

UFO、超能力、ネッシーやツチノコらのブームを作り上げ、

やりたい放題でした。

 

オリバーも「世界初公開!」と謳い、

日本中をオリバー君フィーバーにしてしまった。

 

 

 

もっとも、オリバーはアメリカでも見世物だったので、

世界初公開は嘘。

 

SNSがあれば、簡単にバレていた嘘でしょう。

 

みんなが知らないと思って、しれっとデタラメを言う。

マスコミには今も、そんな考えがありそうだけど……。

 

 

この大スター・オリバー君の世話役だったのが、

テレビ業界に入ったばかりのテリー伊藤。

 

スイートルームに泊まる猿と、世話役の人間。

 

映画『猿の惑星』のような逆転ですね。

 

 

 

この「奇跡の生物」は、大衆の好奇心の的となりました。

 

連日、オリバーをテレビで見ない日はないほど。

 

新聞や週刊誌も「オリバー君特集」を組み、

あることないこと書き立てる。

 

 

なんたって人と猿の混血なんて前代未聞。

 

オリバーはあちこちで「人間らしさ」を披露する。

 

時代はオリバー、一色という感じでした。

 

 

 

さて、こうして超有名猿になったオリバー。

 

テレビも高視聴率を連発してウハウハ。

 

更なる悪ノリ企画をぶち上げます。

 

 

オリバー君と人間の女性を結婚させようとするのです。

 

 

オリバー君の花嫁

 

「オリバー君と結婚して、子供を作ろう!」

「オリバー君と性交渉したら1,000万円あげます!」

 

 

人間の女性にも興奮するオリバーです。

 

「大丈夫。いける、いける」

 

こんな企画が本当にあったんですよ。

 

 

頭おかしいのか!

 

ところが、

応募者が何十人もいた。

 

……昭和、すげぇ……。

 

 

 

そして、19歳の女性が選ばれました。

 

「さ、さ、猿と、じ、じ、19歳のおにゃのこが……」

 

書いている僕も、つい前のめりになる。

(落ち着け、俺)

 

 

でも、これは実現しなかったそうです。

さすがに倫理に反する。

 

「ヒトとサルの混血が生まれたら、それは人間なのか猿なのか法で決めなくちゃならない」

 

国家権力まで巻き込むことになる。

 

 

結局、無理ってことになった。

いや、企画の段階で気づけよ。

 

 

 

まあ、こんなことが許された時代だったんでしょう。

 

テレビが何でもアリで、世間を牛耳っていた。

 

動物愛護も女性の人権擁護もなかった。

 

今では考えられませんね。

 

 

 

なぜ、オリバー君はこれほど騒がれたのか?

 

それはマスコミが報じた「人と猿の混血」だから。

 

 

今考えると、どうも怪しい。

 

だいいち人間と猿の間に子供が生まれるのか気になります。

 

 

混血種は実在するか?

 

仕草が人間のようなオリバー君。

 

顔も人っぽいし、本当に中間種に見える。

 

その正体を探るには、

オリバーの履歴書を見るのが良さそうです。

 

 

オリバーはチンパンジー確定!

 

オリバーは日本に来る一年ほど前。

アフリカのコンゴで捕獲されました。

 

顔の体毛が薄く、変わった猿ということで、

アメリカのサーカスに売られます。

 

それを後に弁護士が買い取り、

その弁護士と繋がりがあった日本のプロデューサーが来日させたのです。

 

 

サーカスにいたので、芸を仕込まれていたと考えられます。

 

ちょっと人間に見える猿に、歩いたり喫煙させたりして、

「これぞ人と猿のハーフでごさいます」

と見世物にしていたのでしょう。

 

人間への慣れがあれば、ヌード写真に興奮もありそうな気がする。

 

 

 

決定的に見えた染色体はどうでしょう?

 

人間46、チンパンジー48で、

オリバーが47ってやつ。

 

これはアメリカで行われた調査なのですが、

どうも不手際があったらしい。

 

 

実際に再調査や、

日本での調査でも染色体は48個。

 

実はオリバー君ブームの頃にも、

「ただのチンパンジー」

と判明していたんです。

 

 

もちろん、テレビは報じない。

 

「検査結果出るのに時間かかってて……」

と言い訳。

 

人気のオリバーの価値をわざわざ下げるなんて。

 

アイドルのスキャンダルをもみ消すように、

オリバーの正体もダンマリ。

 

 

「言わなくてもいい真実」より、

「カネになる嘘」。

 

ずいぶん後になって、

「チンパンジーでした~、テヘ」

と公表した。

 

これもマスコミですよね。

 

 

 

その他の調査でも、

「オリバーはチンパンジー」

で確定しています。

 

骨格、遺伝子も、正真正銘のチンパンジー。

 

オリバーは、

「頭部の体毛が薄い」

「人を真似る芸を仕込まれた」

「ただのチンパンジー」

なのです。

 

 

それを「人と猿の混血」と触れ込んだ。

 

つまり、完全なヤラセ。

 

それでも昭和の時代は、みんなが乗せられた。

 

いい意味でも悪い意味でも、みんな素朴だったのです。

 

 

人とチンパンジーの間に子供ができるわけありません。

 

ヒューマンジーなんて嘘っぱち。

 

しかし、そう断言できない話もあります。

 

 

実在したヒューマンジー

 

オリバーはただのチンパンジーでした。

 

でも、異種間に生まれた動物はいます。

・ライオン♂×トラ♀=ライガー

・ヒョウ♂×ライオン♀=レオポン

・ラクダ♂×ラマ♀=キャマ

・シマウマ♂×ロバ♀=ゾンキー

など。

 

 

ヒトとチンパンジーのDNAは98%一緒。

それならヒューマンジーがいても不思議じゃない!

 

だけど、これは「無理」だそうです。

 

たった2%の違いでも、かなり違う。

人と猿は似ていても、まったく違いますもんね。

 

 

 

けれど、

ダーウィン進化論でヒトとサルが近いのはわかっています。

 

「交配できるのでは?」

1920~30年頃には、考える学者もいたようです。

 

ヒトの精子をチンパンジーに受精させる実験が、

アメリカやソ連(ロシア)で行われた記録がある。

 

 

そして、ヒューマンジーも誕生したといいます。

 

しかし、それは人でもなく猿でもない生物。

 

「これはこの世に存在してはならない半人半獣だ」

学者は怖れ、その生物を殺した……という。

 

 

ただし、これは未確認。

都市伝説のようなもの。

 

どこまで事実かはわかりません。

 

 

最後にオリバー君のその後にも触れておきましょう。

 

 

オリバー君はどうなった?

 

日本中の話題を独占したオリバー君。

翌年にはアメリカへ帰国。

 

ただの見世物として、あちこちに売られ渡ります。

 

 

この日本との温度差。

 

アメリカではオリバーも猿回しみたいな扱いだったんでしょう。

 

そんな生活が8年ほど続き、

ショービジネスを引退。

 

 

 

その後、新しい飼い主が、

化粧品の実験動物を扱う企業にオリバーを売りました。

 

実験にはされなかったそうですが、1.5m四方の狭い檻で7年。

 

オリバーは暴れることも多かったそうです。

 

「大スターの俺様を閉じ込めやがって!」

そんな訴えだったのかな。

 

 

 

後に動物保護施設に引き取られ、

2012年死去。

 

推定55歳。

 

変わったチンパンジーだったために人間に利用され、

ジェットコースターのように激しく上下した生涯でした。

 

 

オリバーは昭和のバカ騒ぎのひとつです。

 

テレビの悪ノリが当たり前の時代ならではの出来事。

 

反省点もたくさんあるでしょう。

 

 

でも、僕はこんなバカ騒ぎができる日本という国、

けっこう好きだったりします。

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なんでもありだった昭和!オリバー君はチンパンジーでした~まとめ~

 

昭和は「闇鍋」みたいな時代です。

 

みんなが持ち寄った食材を鍋に入れ、暗い部屋で食べる。

 

何が出てくるかわからない、予測不能って感じ。

 

オリバー君も「昭和の変な話」のひとつです。

 

 

マスコミが煽り、

大衆が振り回された国家レベルの喜劇ですよ。

 

ヒューマンジーだの、猿と結婚だの、今思えば呆れてしまう。

 

 

でも、ちょっと楽しそうじゃないですか?

 

余生はわりと平穏に過ごしたオリバー君。

 

「海の向こうのヘンテコな国」

の騒動を思い出すことはあったんでしょうか。

 

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