日本では童謡で有名なアイアイ。
誰でも一度は「ア~イアイ♪」と歌い、
名前の可愛らしさに親しみを持ったことでしょう。
歌は「ア~イアイ♪……(なんやねん?)……おさ~るさんだよ~♪……(ああ、猿か)」
と教えてくれる親切仕立て。
その後も軽快に「ア~イアイ♪」を挟みながら
「南の島の」「尻尾の長い」「木の葉のおうち」「お目々の丸い」
とアイアイの特徴を挙げていくだけの、やっつけ仕事みたいな歌です。
歌だとアイアイはかなり可愛い印象の動物なのですが、
実際は出会うと怖い悪魔のような猿なんです。
悪魔の使いと呼ばれている理由は?
童謡にあるアイアイの特徴は全部本当。
より正確にいうなら、
アフリカの孤島マダガスカルの局地にいて、
体長よりも長く太い黒々とした尻尾で、
夜な夜な樹上をうろつく夜行性の原始猿で、
飛び出したような丸い目をしています。
たしかに歌詞は間違ってない……。
さらに補足すれば、
コウモリかネズミのような顔、
横に張り出した大きな耳、細く長い手足の鉤爪、黒い体毛。
アイアイの発見者は最初、リスかネズミの仲間と思ったそうです。
あまりに正体不明のいびつな姿。
実物はお世辞にも可愛いとはいえません。
いや、むしろ不気味です!
歌のイメージで本物を見た幼児は絶対ギャン泣きします!
photo credit: makitani アイアイ@上野動物園 via photopin (license)
「可愛いは正義」だとすれば「ブサイクは悪」
アイアイはこの見た目がとにかく悪すぎなのです。
そんな醜悪な姿が災いして、
現地では「不吉な動物」「悪魔の使い」とまで呼ばれる、
忌み嫌われる動物扱いなんですね。
アイアイにはもうひとつ、
歌詞にない特筆すべき特徴があります。
異様に長い、手(前肢)の中指です。
奇形といっていいほど気味の悪い中指こそ、
アイアイ最大の武器であり、人間に恐怖を与えている特性のようなのです。
グロテスクな長い指
長い中指は、アイアイの採餌時に威力を発揮します。
この中指で触診のように木をコツコツ叩き、
効率よく中にいる虫などを探し出すんです。
それをほじくりだすのも中指。
長く細いので奥まで漁れるわけ。
まさに進化の妙だと思いませんか?
他の動物には見られないアイアイの特徴ですが、童謡では歌われていません。
作詞の人も
「中指な~が~い♪……って、ないわァ……」と思ったんでしょう。
素晴らしい特性なのに、
ただでさえ不気味なアイアイに、この長い中指は最悪の組み合わせです。
マダガスカルは迷信深い人が多く、
アイアイの中指に指されると死ぬと今も信じられています。
僕はこういう突き抜けた進化は個人的に好きなのですが、
ほとんどの人には不評のようです。
まあ、見た目の怖いアイアイが、
悪魔的な長い中指で夜中に木を叩いている様子が、
死神じみて見えるのは仕方ないでしょうか。
唯一、アイアイが人間に好かれそうな部分を挙げれば、
40cm程度、体重3kgという赤ちゃんサイズの大きさでしょうか。
抱っこしやすいかな~と……(したいかどうかはともかく)。
昔はもっと大きなアイアイもいたようなんですが。
さらに怖いジャイアントアイアイ
アイアイ科アイアイ属は、今のアイアイ一種しか存在していません。
2.000年前には同じマダガスカルに、
今のアイアイより2~2.5倍もあるジャイアントアイアイがいたそうです。
容姿は現存のアイアイと変わらなかったらしく、
でかい分ますます可愛くないですね。
大きくて不気味だったからこそ目立って、人間に殺されて絶滅したのでしょう。
アイアイは好奇心も強く、人に寄ってくる性格だとか。
悪魔みたいな生き物がフレンドリーに近づいてきたら、
恐怖はかなりなものだろうし、その恐怖が迫害に繋がるのも世の習い。
魔女狩りってやつですね。
現存のアイアイも姿から悪魔扱いで殺されて、
森の開発によって生息地も減少し、絶滅に瀕しています。
マダガスカルでもやっと保護に乗り出していますが、
まだまだ個体数が増えたとはいえないようです。
アイアイの怖い見た目の秘密~まとめ~
ところでアイアイは日本でも見られるのは上野動物園だけという、
パンダよりも希少な動物って知ってましたか?
人気がないので、パンダほどの懸命な保護もされていません。
パンダを見るのに上野で行列に並ぶのもいいですが、
僕は動物が好きなら絶対にアイアイも見てほしいと思っています。
歌のおかげで日本はアイアイ愛(アイ多すぎ)
の下地もあるし、
意外と今なら「キモ可愛い」と受けることもあるかもしれない。
数さえ増えてくれれば、
性格は温和で人懐こく、いいペットになりそうなんですがね。