誰もが目を奪われる、
長い一本角を持つイッカクは、とにかくカッコいいですよね~。
さしずめ「自然界の槍使い」といった印象です。
イッカクは、この角がとにかく目立ち過ぎで、
だから名前もイッカク。
「角が本体かよ」というくらい強烈な個性で、
胴体がどんなだったか記憶に残らないくらい。
まあ、ゴマフアザラシのような柄の、体長5m弱のクジラなんですが…
この記事で主に取り上げるのも、残念ながら角。
メガネの人の、メガネだけを褒めるようで申し訳ないけれど、
あの角が気になってしょうがない。
そもそも、イッカクのあの角ってなんなの?
イッカクの角!あれは何?
最長で3mにもなる一本角をつけたイッカク。
佐々木小次郎の備前長船か、
本多忠勝の蜻蛉切か、というカッコよさです。
(例えがマニアックでした)
まさに、中距離用の長い武器を持った生物!
という感じなのですが……。
イッカク「すいません。あれ歯です」
……歯なの?
ってことは、剣でも槍でもなく、ただの出歯?
事実はいつも人をガッカリさせるものです。
イッカクの上あごには、
2本の犬歯があるのですが、
左の1本が、反時計回りにねじれながら伸びたものが、角の正体なのです。
なので、角は額から出ているわけではなく、
上唇を突き破って出てきています。
一気にカッコ悪くなってきました……。
でも、どうして歯を伸ばす必要があったんでしょうか?
歯であるというのは「なんだかな~」ですが、
あんな長槍のような部位を得たことには、壮絶な生存競争があったに違いありません。
何のためにあるの?
角があるイッカクはオスで、メスはありません。
といっても、メスの100頭に2、3頭は角持ちもいるようです。
さらに、オスの500頭に1頭ほど、右の歯も伸びたレアな2本角もいます。
二刀流もイケてる!
イッカクの角は進化の謎で、何のためなのか断言はできませんが、
現在考えられている説は、次のものがあります。
・氷に穴を開ける。(砕氷ドリル?)
・オス同士が長さを競う。(武器で使えよ)
・獲物を叩く。(刺さんのか)
・状況確認のセンサー。(虫の触覚かよ)
・クジラ類のレーダー機能エコロケーションの超音波発生部位。
(尖がる意味がない……)
有力なのが「長さを競う説」と「センサー説」
センサー説は、角に複雑な神経回路が走っているからで、
気圧や気温などを察知できます。
僕も寒い日は歯がちょっと痛むのですが、
同じ感覚なのかな…
でも、それならメスが、角なしなのはおかしい気もします。
長さを競うほうは、
イッカクが角を突き上げて、高さ自慢をして、
優劣を決めているらしい光景が、よく見られるからなのだそうです。
オスの「タマ」のデカさと、角の長さが比例する、という研究結果もあるのだとか。
どっちにしても、あまりパッとしない理由で、
長角1本を伸ばすという特殊な進化をしたらしい。
どこまでも期待を裏切るヤツだ。
結局、イッカクはこの角で苦労も多いようです。
角が狙われる理由
伝説の一角獣ユニコーンの正体とも目されるイッカクは、
実際に、角がユニコーンのものだと高額で売買されていましたし、
幻の生物として「角で雷を呼ぶ」
なんて噂までありました。
たしかに雷属性っぽいですが、もちろん雷は呼べません。
ユニコーンの角は、毒を浄化すると言われていたため、
血で血を洗う権力争いの中で生きる、
王族や為政者が、身を守るために高値で売られたわけです。
また、イッカクの角は観賞品になるばかりか、
漢方では精力増強、解熱効果、精神安定
(全部それほどの効果はないよう)の薬に利用されていて、
値段が高騰したのです。
なんたって幻の生物の角ですから、
なんだか嘘くさい効能も信じられてしまったんでしょうね。
イッカクの角は現在も、
1本数十万~百万超で取引されます。
今は保護のため、イヌイットだけしか捕獲が認められていませんが、
イッカクの個体数が低いのは、ほとんど角が狙われたためでしょう。
あの角、いかにも折れそうで危なかしい生え方ですよね?
歯があんなふうに出ていたら、いつもビクビクしてなきゃなりません。
で、実際にポキン「痛っ!」といっちゃう事も少なくないそうです。
角は大人の歯と同じで、折れると二度と生えてこないのです。
それでも生きてゆけるところを見ると、
あの角別になくてもいいんじゃねーのと思うんだけど。。。
カッコいいと無責任に言ってきましたが、
イッカクは、角のおかげで苦難の歴史を歩んできたと思います。
あまりにも、ミステリアスor危なかしい部位だったせいで、
要らない苦労を背負ってきたのでしょう。
謎多きイッカクの牙~まとめ~
自然界の槍使いを期待して、イッカクの角を調べてきましたが、
角は歯であり、そのせいで苦労も多いという寂しい結果でした。
でも良いことが一つありました。
角の扱いが難しいため、
どこの水族館でもイッカクは飼えないのだそうです。
イッカクに水槽は狭すぎますもんね。
いつまでも北極海の大海原で泳いでほしい、
カッコいい動物であり続けてくれるはずです。