特集が組まれるのは、
アフリカのライオンばかり。
インドにも、インドライオンっていうライオンがいるのに。
まあ、分からなくもないですよ。
アフリカのサバンナは、
大型動物がひしめく、地上最強の弱肉強食の世界ですからね。
だけど、インドにはベンガルトラもいる。
アフリカのライオンは、トラと戦うことはない。
生態とか特徴だって、
アフリカのライオンとインドライオンとでは違う!
今ので、インドライオンに、少しは興味を持って貰えました?
今回、お伝えしていく内容です。
インドライオンの特徴を、アフリカのライオンと比較。
絶滅危惧と保護の話と、ベンガルトラとの関係。
最後に、見れる動物園の紹介です。
では順番に、インドライオンの特徴から見ていきましょう。
目次
インドライオンとは
インドライオンの別名はアジアライオン。
つまり、かつてはアジアにもライオンがいたってことです。
パキスタン・インド辺りから、
イラン・イラク辺りまで。
さらには、一部ヨーロッパや、北アフリカにもいたって言われてます。
それが、人間が関わるようになってから、徐々に絶滅していき、
辛うじて生き残ったのが、
現在のインドライオン。
そもそも、ライオンってアジアで生まれたんですよ。
それがどんどん西へ広がって行き、
アフリカに渡ってアフリカライオンになりました。
だから、ライオンがアジアにいたからって、
全然おかしな話ではないんです。
アジアのライオン、
インドライオンってどんなライオンでしょう。
分かりやすく、アフリカのライオンと比べてみます。
アフリカとインドのライオンの違い
例えば、オスのたてがみ。
アフリカライオンのたてがみは長く、うっとうしいくらい毛が密集していますよね。
肩から胸や、お腹までみっしり生えています。
でも、インドライオンのたてがみは、せいぜい肩まで。
毛も少なめで短く、すっきり涼しげな印象です。
比較出来るような、
画像とか動画探したんですけど、あんまり良いのに見当たりませんした。
英語だけど、これとか分かりやすいかも知れないです。
さらに、違いはこんなにも沢山あります。
・インドライオンの身体の大きさは、
アフリカライオンより少し小柄。
・尻尾のふさ毛が、アフリカライオンに比べると少し長め。
・毛の色は、アフリカライオンが赤茶色、インドライオンは少し灰色。
でも、どれもぱっと見て分かるほどではありません。
両者を見分けるのに一番頼りになるのは、なんといってもお腹のたるみ。
横から見ると、胸からお腹にかけて、
輪郭線が2本あるように見えるんです。
比べて見てみましょう。
これが、インドライオンのメス。
Marcel LangthimによるPixabayからの画像
似たようなアングルの画像を探してみました。
これが、アフリカライオンのメス
PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像
どうですか?
分かりますよね?
インドライオンのお腹は、
だるんとしてるでしょう。
アフリカライオンが痩せても、こんなたるみはできないので、
何か特別な役目があるのかもしれません。
インドライオンは、アフリカライオンに比べ、
群れの数も少ないです。
インドライオンは群れで狩りをしない
アフリカライオンとの最大の違いは、
大きな群れを作らないこと。
メスが中心で、オスは1~数頭。
この構成は、アフリカライオンと同じ。
だけど、その規模は圧倒的に小さめです。
アフリカライオンの群れは、メスライオンだけでも20頭ほどいます。
それに比べ、インドライオンの群れは、
オス1頭、メス2~3頭、後は子供たち。
10頭いるかいないかの群れです。
そして、さらなる違いは、大人が単独で狩りをすること。
理由は、
インドにはアフリカスイギュウのような、
1対1では負けてしまうほど、手強い草食動物がいないから。
同じサバンナでも、アフリカほど乾燥化が進んでないので、
身体を隠す木や草がたくさんあるから。
でも、まったく協力しないという訳でもない。
だって、
そこはやっぱり、ライオンですからね。
母娘・姉妹で狩りをすることもあるようです。
インドライオンはどこに棲んでるの?
インド西部、インド洋に面したグジャラート州にある、ギル森林保護区。
そこが、野生のインドライオンが生き残っている、唯一の場所です。
最初は15頭で、絶滅は時間の問題でしたけど、保護区設立と保護活動が大成功。
今では600頭ほどにまで増えました。
この保護区。
1965年に、人口の多い地域のど真ん中に作られました。
周囲は、200万人以上の人が住んでいて、
人間の居住空間が周りを取り囲んでいます。
しかも、この国立公園には柵がない。
隣接した地域では、ライオンと同居している状態です。
それに加え、保護政策が上手く行ったおかげで、
積極的に、
保護区を出ていくライオンが目立ち始め、
ますます境界が曖昧になってきました。
中には、保護区から60㎞以上も離れた海岸に、
縄張りを持つようになった群れもいます。
海水浴場に横たわる、野生のライオンの群れ。
日本ならもう非常事態です。
でも、これがインドのやり方。
世界でも稀な、保護活動の在り方です。
だけど、
これだと獣害事件とか家畜被害とか大丈夫なの?
とか思いますよね。
そこで次は、インドに住む人たちと、
インドライオンとの関係を見てみましょう。
インドライオンの守護者:マルダリ族とキャットウーマン
やはり、野生動物と肩を突き合せて生活しているインドでは、
深刻な事故や、トラブルが少なくありません。
でも、どんなに危険な動物でも、
駆除は法律で禁止されています。
もともと、ヒンズー教の影響もあって、インドの人たちの心はとても広い。
でも、トラブル回避のためには、やっぱり何かしら行動する人たちが必要ですよね。
その代表を、2つご紹介しましょう。
マルダリ族とキャットウーマンです。
遊牧民族マルダリ族
彼らは、
ナラシンハ(ライオンの頭を持つ神様)を崇める、熱心なヒンドゥー教徒で、
インドライオンに、
自分たちの土地を文字通り提供した人たち。
遊牧民にとっては、ライオンは大切な家畜を食べてしまう困った存在です。
だけど、彼らはこう考えました。
・ライオンは、家畜の餌となる草を食い尽くす草食動物を食べ、追い払ってくれる守護神である。
・ライオンに食べられた家畜は、守護神への捧げ物である。
マルダリ族にとって、
インドライオンは一族の大切な守り神。
しかも、かつて広範囲で繁栄していた、
アジアライオンの生き残りとして貴重な存在です。
彼らは、その貴重な存在の守り人になりました。
インドライオンは、彼らの自慢であり誇りでもあるんです。
キャットウーマン
キャットウーマンは、
ギル森林保護区の女性レンジャーの愛称です。
保護区をパトロールして、怪我をしたライオンの治療をしたり、
親とはぐれた子ライオンを、保護したりするのが彼女たちのお仕事です。
特別な訓練を受けた彼女たちの特技は、
銃を持たず、木の棒1本で上手にライオンをあしらうこと。
住民とのトラブルにも関わり、
人とライオンの双方を、少しでも傷つけたりしないよう、
日々努力を続けている、インドライオンの女神たちです。
キャットウーマンが扱うのは、なにもライオンだけではありません。
ヒョウも扱いますし、何ならトラも。
ライオンのいる地域にトラはいませんが、
それでも、保護区が狭くなってきている現在、
放浪中のビッグキャットたちが、鉢合わせしないとは限りません。
インドライオンVSベンガルトラ
インドには、インドライオンだけでなく、
ベンガルトラもいます。
どちらも、絶滅が危惧されている生き物ですが、
両者が縄張り争いをして、片方を絶滅に追いやるなんてことは事実上起きません。
絶滅に追いやっているのは、自然を切り開いて、
ライオンたちの生活の場を狭めている私たち人間の方。
ライオンとトラには、
大きな身体上の違いがあり、決定的な境界があるんです。
ライオンとトラの違い
まずライオン。
ライオンが好むサバンナ地帯とは、
乾季と雨季に、完全に分かれている地域のことをいいます。
乾季は全く雨が降りませんから、ライオンはこれに絶えるために、
獲物の水分だけでも生きていける身体を持っています。
次に、トラ。
トラの好む森林地帯には、大きな池や湖が常にあります。
いつでも水を飲むことができるし、
水に入って身体を冷やすことだってできる。
つまり、水に依存した生き方をしてるんですよ。
これが決定的な違い。
ライオンは、森の中で何とかやっていけるかもしれないけど、
トラは、サバンナの乾季には絶対絶えられないということです。
この大きなネコたちは、見た目以上に、とっても大きな違いを持ってるんです。
だとしても、絶対に鉢合わせないという訳でもありません。
鉢合わせたらどうなっちゃうんでしょう。
鉢合わせたらどっちが勝つ?
いくら、インドの乾燥地帯と、森林地帯で棲み分けているといっても、
境界での鉢合わせはあり得ます。
もちろん、身体が大きいのはベンガルトラ。
平均すると、1割から2割も身体が大きく、体重もありますから、
1対1で鉢合わせたら圧倒的に有利です。
それに加え、
大きな群れを作らないインドライオンは、
チームワークで対抗するのも難しい。
ネコ族は、別のネコ族が大嫌い!
ライオンが、
ヒョウを見つけたら容赦しないように、
ベンガルトラも、
インドライオンを見つけたら積極的に殺すかもしれません。
どう考えても、ライオンが勝てる要素のないこの戦い。
境界に生きるインドライオンは、トラに怯えて、
できるだけ鉢合わせしないように行動しているのではないでしょうか。
なんだ・・・
インドライオン弱っちいなって、なっちゃいましたか?
でもね。
トラは強かったから、アジアの森林地帯に留まったけど、
ライオンは弱かったから、アフリカの乾燥地帯にも進出できた。
そういう見方もできるのではないでしょうか。
さて、このインドライオン。
絶滅が危惧されていますので、
各国の動物園が繁殖を試みています。
もちろん、日本でもやっていますよ!
インドライオンを見れる動物園
日本でインドライオンを飼育している動物園は、全部で3ヶ所です。
上野恩賜動物園(東京都台東区上野公園)
上野動物園には、現在2頭。
2002年の園内生まれ、園内育ちのモハン♂と、シャクティ♀の兄妹がいます。
ただ高齢でもあり、今年に入って体調がすぐれないため、
現在はバックヤードで投薬治療中です。
もし運動場にいなくても、それは体調の悪さと戦っているという意味。
心の中で「頑張れ~」って、そっとエールを送ってあげてくださいね。
よこはま動物園ズーラシア(神奈川県横浜市旭区)
一時は10頭もいたズーラシアは、
現在3頭。
まず、2017年にシンガポールからやってきた、
バドゥリ♂。
元気いっぱいなバドゥリは、現在お嫁さん候補を絶賛募集中です。
そして、園内で生まれ育ったメス2頭。
穏やかな性格のパールバティ♀と、好奇心旺盛で活発なガウリィ♀。
なんと2000年生まれのご長寿姉妹です。
さらにこの2頭は、
上野動物園のモハンやシャクティの、
異母きょうだい。
父親が同じで、しかも母親が姉妹同士。
かなりの高齢ながら、のんびり元気に暮らしています。
<ズーラシア・カラスがライオンにちょっかい>
野毛山動物園(神奈川県横浜市西区)
野毛山動物園は、オスが1頭。
名前はラージャー♂。
2008年生まれで、
ズーラシアにいる姉妹の実の弟。
オスなのに、可愛い表情が評判の、野毛山動物園の大スターです。
動物園生まれの動物園育ちで、人間大好き。
見ていると、
大人のオスライオンというよりは、巨大な子ネコといった感じです。
野毛山動物園の良さは、動物と人間との境界線が近いこと。
可愛い仕草と、クリッとした目を間近で見ることができますよ。
インドライオンの特徴と生態!見れる動物園は3ヶ所~まとめ~
ライオンは、元々アジアがルーツ。
インドライオンは、アジア一帯で繁栄していた、ライオン一族の生き残りであり、
生き証人です。
インドの人たちの手厚い保護や、世界中の動物園の繁殖計画によって、
15頭から600頭以上にまで数を増やしてきました。
だけど、他の絶滅危惧種同様、問題は山積み。
だからまず、インドライオンという、
アジアに住むライオンのことを知ることから始めましょう。
日本では、実質2つの動物園でしか見ることができませんが、
ネットには動画が、写真がたくさんアップされています。
アフリカライオンとの見た目の違いはどこにあるかな?
まずはそこから始めてみませんか?
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