世界最大の大河アマゾンには、怖ろしい魚も多く生息しています。
ピラニアでしょう?
と、普通は思うんじゃないでしょうか?
殺人魚の代表選手ですからね。
しかし、
現地で、もっとも怖れられているのはカンディルです。
カンディル?
と、首をかしげる人もいるでしょうが、
最近は、日本でも観賞魚で飼われることもあり、
知名度は低くもないと思います。
このカンディル、とんでもなく凶悪。
「カンディルが咬んでる」
なんて、オヤジギャグを飛ばしている場合じゃありません。
目を覆いたくなるような、人喰い事件をやらかしているギャングであるばかりか、
飼育されているってことは、
日本で繁殖する可能性もあるんです!
カンディルとはどんな魚で、どれほど凶暴なのか気になりますよね。
目次
ピラニアよりも恐ろしい?カンディルの生態
カンディルは南米の肉食淡水魚です。
カンディル種というナマズの仲間を、総称して呼んでいるのです。
大きく分けて2種類います。
細長く、
ドジョウのように見えるトリコミュクテルス科。
大きさは10cm程度。
頭の丸いクジラ型のセトプシス科。
大きさは20~30cm。
どちらも一見、悪そうには見えません。
<カンディル2種類>
その風貌はむしろ、
「さえない小魚」といった感じ。
しかし、1981年に起こった、
ソブラル・サントス号の事故を知れば、
その怖ろしい生態が垣間見えることでしょう。
体内に侵入され、中から食われる!
アマゾン川を航行する、
大型客船ソブラル・サントス号は、地域の人々には貴重な足です。
1981年の9月のその日も、
旅行者や、里帰りの家族連れなどで船内はいっぱいでした。
深夜、
オビドス港に停泊していたサントス号で、浸水が発生。
乗客は川に投げ出されます。
180人の乗客は、なんとか岸に泳ぎ着き助かりますが、
乳児や女性を含む200人は溺死。
亡くなった人たちを襲ったのがカンディルです。
引き上げられた水死体は無残なものでした。
無数のカンディルが、鼻腔や肛門から入り込み、
体内から貪り食われていたのです。
これがカンディルの怖い生態。
カンディルは獰猛な肉食で、集団で大きな生きた獲物にも襲い掛かるのです。
人間も例外ではありません。
これまでに数百もの人が、カンディルの犠牲になっているといいます。
さらにおぞましいのが、獲物の体内に入り込むこと。
細いトリコミュクテルスは口、鼻、耳、肛門、
時には尿道からも侵入。
セトプシスは、表皮を食い破るというエゲツなさ。
普通は、魚のエラ部分などから侵入しますが、
人間であればすべての穴が入口になります。
魚だとこんな風に。
しかも、カンディルのトゲが逆向きの返しになっている。
そのため、引っ張り出すことは難しく、
無理をすれば死ぬほどの痛みを味わうことになる。
想像するだけで背筋が凍りませんか?
サメのような殺人魚とはベクトルの違う恐怖ですよ。
もちろん、アマゾンではピラニアより怖れられており、
対策も講じられているのです。
ピラニア以上の殺人魚!防御はあの下着?
鋭い牙を持つピラニアは、えらく攻撃的に見えますが、
人間が水に落ちたくらいで襲うことはありません。
ピラニアは強面に似合わず、とても臆病なんです。
死んだ人間ならともかく、
生きた人間がピラニアのいる場所に落ちても、
数分で白骨にされるなんていうのは、
度過ぎたフィクション。
ピラニアが凶悪というのは、イメージにすぎません。
アマゾンで、ピラニアの100倍も怖いのはカンディルのほうです。
例えば、現地では川で用を足すことも多いのだそうです。
女性はしゃがむので、
水面の近くに尻や大事な部分があることになります。
そんなとき、カンディルがにゅるりと入ってくることがあるらしい。
このシチュエーションが、すでにゾッとしますよね?
カンディルはアンモニア臭に反応するといわれ、川のトイレは危険。
侵入されると、
ひどい激痛で、その場でショック死することもある。
結石の経験がある人はわかりやすいかも。
サントス号事故でも、
そうやって亡くなった犠牲者が少なくありませんでした。
激痛に堪えても、その後の感染症などが心配。
すぐに、病院で取り出してもらうしかないのですが、
あまりの痛さで、病院まで持たない人も珍しくないとか。
ちょっと勘弁してほしい最期ですよね。
とにかく、アマゾンではピラニア以上に、
カンディル対策のほうが大切なのです。
川に入る場合は注意が必要。
地元では、
布をフンドシのように巻いて局部を保護するといいます。
余談ですが、
このカンディル対策のフンドシがモデルになって出来た下着が、
あのTバック。
お色気たっぷりのTバックが、
命を守る防護用だったとは意外でしょ。
「こんな殺人魚が身近にいないでよかった~」
と安心したいところですが、そうも言えません。
近頃、カンディルを飼育する人が日本でも多いのです。
無責任な飼い主がカンディルを川に捨て、繁殖でもしたら……。
どうなっちゃうんでしょう?
日本で繁殖する可能性は?
「カンディルが可愛い」
という感覚は僕にはないのですが、
飼育者の好き好きは多様です。
獰猛な肉食魚アロワナは人気のペットですし、
有毒のヘビやサソリを飼う人もいる。
危険な生き物は、魅力的でもあるのでしょう。
観賞魚として、カンディルが日本でも普通になってきています。
飼育・水族館でカンディルが増えている!
飼育されるのは、
ブルーカンディル、ブラウンカンディルといった、
セトプシスが主で、値段は数千円。
カンディルの中には、
おとなしく、微生物などを食べている平和的な種もいますが、
飼われるものはもっぱら肉食です。
水族館でも見られ、餌の時間は人気イベント。
魚の切り身などを与えられたカンディルが、群れで襲い掛かり、
その身を引きちぎる饗宴が見られます。
なかなかエグい見世物ですが、人間は安全な水槽の外にいるから大丈夫。
つくづく人間は、
「対岸の火事」
が見たくてたまらない生き物だな~と思う。
でも、日本の川には外来の危険な生物も増えている。
それらは、モラルのない飼育者が手に余って、
無責任に捨てたものです。
日本で、カンディル被害が出てもおかしくないじゃありませんか!
日本での繁殖は未確認
現在、日本でのカンディルの繁殖は確認されていません。
アマゾン生まれのカンディルは、
寒さに弱く、日本の河川・湖沼では繁殖できないと予想されています。
また、カンディルは、
基本的に群れで生活する魚で、単独では脅威もほとんどない弱い魚。
数匹、日本の川に放流しても、アマゾンのように生きてゆけるとは考えにくい。
なので、心配はいらないでしょう。
それでも温暖化の影響で、日本の川の水温も上がっています。
本来、日本に定着できない、南国産の生物が繁殖していた事例もある。
カンディルの場合は、
意図的に、数百匹単位で放流されない限り大丈夫そうですが、
悪条件でも、生き抜くしぶとさはありますから、
飼う人は絶対に捨てないようにしてください。
局部を出して川に入るような人は、日本では見かけませんが、
セトプシスなら、皮膚に穴を開けても侵入します。
Tバックでも防げませんからね。
殺人魚カンディルの生態と人喰い事件~まとめ~
人喰い事件……というより、
体内に侵入して激痛を与え、蝕むように命を奪う殺人魚カンディル。
その生態を聞くだけでもガクブルですよね。
怖ろしい魚ですが、
ピラニアと同様に、必要以上に話が盛られているふしもあるようです。
サントス号事件では、犯人とされていますが、
全員を歯牙にかけたというのでもないでしょう。
アンモニアに反応するというのも未確認で、
「川に気をつけろ」という、訓戒に利用されているだけとも思えます。
それでも凶暴なのは間違いない。
日本の川で増えないよう、一人ひとりが努力しなければなりませんね。