ツシマヤマネコは、
九州と朝鮮半島の間にある、対馬という島にだけ生息する野生ネコです。
1971年には、国の天然記念物にも指定されています。
日本に生息する野生ネコは、
ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコの2種類しかありません。
その片方といことですが、ヤマネコってイエネコとどう違うのでしょう。
イエネコとの生殖は可能なのでしょうか。
これらの疑問と、イリオモテヤマネコとの違いなんかもお伝えしていきます。
ツシマヤマネコの生息地と特徴!イエネコとの違いは?
ツシマヤマネコはその名の通り、
日本の対馬(つしま)にしか住んでいません。
今からだいたい2万年くらい前、
日本と中国は陸続きだったので、
中国大陸から対馬に入ってきたといわれています。
しかし、対馬海峡にはばまれて日本本土には入らなかったらしい。
以前は対馬全島に分布していたのですが、
現在は狭い地域に分断されて生息していると思われています。
1960年代の調査では、
生息数は250~300頭くらいでした。
しかし、1985年~87年の調査では、
80~130頭と報告されています。
この数は、種を維持できるギリギリの数だそうですよ!
それにも関わらず、1994年~96年の調査では、
何と70~90頭にまで減っていました。
もはや絶滅寸前ではありませんか!!
ツシマヤマネコは、コナラ林や草地で主にネズミを食べて生活しています。
しかし近年、植林地の増加によって自然林が急激に減少してきたのが、
ツシマヤマネコ減少の大きな要因となっています。
また、予想外に人家近くで繁殖しているので、
ツシマヤマネコの子が野犬などに捕食されているようです。
このツシマヤマネコは、イエネコとだいたい同じくらいの大きさです。
家で飼っているネコだけではなく、野良ネコもイエネコなのですよ!
イエネコというのは野生のものではなく、
家畜ネコと言う方がイメージしやすいかな!?
そのイエネコとツシマヤネコとは、どのように違うのでしょうか。
一番はっきりしたポイントは、ツシマヤマネコには、耳の後ろに白い斑点があることです。
その他に、ツシマヤマネコの耳は先が丸くなっている。
それから、鼻の両側に白い縞がある。
そして尾が太くて長い!
このような違いでイエネコと見分けられるのですが、
ツシマヤマネコと野良ネコの間で、雑種とかできないのでしょうか!
もしできたら、どんな子ができるのでしょうね!?
イエネコと交尾することはあるの?
ツシマヤマネコは、
分類上ベンガルヤマネコの亜種だとされています。
イエネコとは属というグループが異なるのです。
属が異なれば、野生ではまず交配はできません。
異なる属の生物を、飼育しながら無理矢理交配させることもできますが、
子は生殖不能であったり、奇形や障害を持って生まれることも多いようです。
ですから、ツシマヤマネコでは雑種個体が生まれたという報告はありません。
しかし、イエネコとベンガルヤマネコを、
無理矢理交配させてできたネコもあるそうですので、
それが本当のことなら、
イエネコとツシマヤマネコも、交配可能ということなのでしょうか。
イエネコとヤマネコを交配させて、
新種のネコをつくろうというブリーダーもいるそうですよ。
例えば、ベンガルという種類のイエネコはご存知でしょうか?
あの「ベンガル」は、ヤマネコとイエネコを交配させて作出された品種です。
きっかけは、偶然の産物だったようなんですが、
イエネコの白血病の研究のために、
その抗体を持つヤマネコに注目が集まった経緯などもあって、作り出されました。
次に、日本にいる野生ネコは、
ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコなのですが、
これらのネコはどこが違うのでしょう。
イリオモテヤマネコとの違い
イリオモテヤマネコは、
沖縄県の西表(いりおもて)島に生息しています。
1967年に発見され、
「ネコ科祖先の生き残り」とか、
「生息数はわずか30~40頭」などと報告されたため、世界的にも注目を集めました。
染色体を分析した結果、
ツシマヤマネコと同じように、ベンガルヤマネコに最も近いことが分かっています。
これもツシマヤマネコと同じように、中国大陸から渡ってきたらしい。
ツシマヤマネコとイリオモテヤマネコ、とてもよく似ています。
どちらもイエネコと同じような大きさです。
耳の後ろの白斑も、額の縞模様も、からだの斑紋も、太い尾も共通の特徴です。
しかし、ツシマヤマネコの方が足や耳が小さく、毛が深く、全体的に丸っぽいかな。
体つき以外に、
どちらも九州の北と南の小さな島にしか生息していないという点も同じですね。
それならどこが違うのかというと、まず食性ですかね。
ツシマヤマネコは主にネズミを食べます。
糞には、それ以外に鳥の羽やイネ科の植物が入っていることも多いので、
そういったものも食べるのでしょう。
これに対してイリオモテヤマネコは、昆虫類からハ虫類、鳥類、
哺乳類といろいろな種類の生物を食べるようです。
これは多分、生息地の違いだと思われます。
一般に、
緯度が低くなるにつれて動物の種類は増加します。
西表島は亜熱帯なので、動物の種類が多いため、
利用可能な餌の種類が多いというのが大きな理由でしょう。
またそれ以外に、
イリオモテヤマネコと競争する、他の食肉動物がいないということも、
多くの種類の動物を餌として利用できる要因なのだと思います。
それから、生息場所もやや異なっていますね。
前にも述べたように、ツシマヤマネコはコナラ林や草地、農地などに住んでいますが、
イリオモテヤマネコは沢沿いやマングローブ林など、
水が豊富な場所や林の周辺部に生息しています。
また、行動範囲にも違いが見られます。
発信器で調査したところ、ツシマヤマネコの行動圏は、
メスの場合約1~2km2、オスではメスの7~8倍だったそうです。
これに対しイリオモテヤマネコでは、
メスが約1~3km2、オスは約2~5km2との報告がなされています。
どちらのヤマネコも繁殖や子の成長に関する情報などが非常に少なく,
生態に関する研究が十分になされていないのが、頭の痛いところですね。
ツシマヤマネコを飼育している人によると、
一番に感じるのは「なつかない!」ことだそうです。
そして、人間の気配がある限り寝ないそうですよ。
さすがに野生、警戒心旺盛ですね。
ツシマヤマネコの特徴や生息数~まとめ~
近づいてきて足下でじゃれついたり、
腹をさすられてうっとりしていたかと思えば、
気に入らなければ人間をフン!
と無視したりもする可愛いイエネコ。
その祖先ともいえる人になつかない警戒心の強い野生ネコは、
日本にはたった2種類しかしません。
どちらも国の天然記念物になっているのですが、絶滅の危機に瀕しています。
ヤマネコと人間の共存のための具体的な対策と、
常にヤマネコの生息状況をモニターできる研究体制などを充実させ、
これらの貴重なヤマネコを、未来の遺産として何とか残していきたいものですね。