中生代。
それは、陸にも海にも巨大生物が蠢いていた恐竜の時代です。
そんな時代、
海を泳いでいた魚にリードシクティスというのがいました。
このリードシクティスが近年、俄然注目されることになります。
「史上最大の魚類かもしれない!」
史上最大……なんと心惹かれる表現でしょうか。
このサイトの読者なら、それでご飯3杯食えそうな言葉ですよね。(そうでもないか……)
現在、もっとも大きい魚類はジンベエザメ。
一説には、その2倍もあったというのです。
「あの巨大サメ・メガロドンより大きいじゃないか!」
驚愕ですよ。
リードシクティスとはどんな魚だったのか気になりませんか?
その大きさは事実なのでしょうか?
まずは、その大きさを分かり易く、
有名なメガロドンと比較してみましょう。
リードシクティスは史上最大の魚?メガロドンよりも大きいの?
リードシクティスの化石が初めて見つかったのは1889年でした。
最初は恐竜の化石と思われていましたが、魚であることが分かり、
でかい魚だな~くらいは思われていたんでしょうが、特に研究は進みませんでした。
その化石が、部分部分しかなかったので、
実体もよくわからないまま、百年ほども放っておかれていたのです。
ところが同じ場所から、1985年に尾びれの一部の化石が新たに見つかった。
その大きさはなんと3m!
普通の家なら、床から天井まであるような尾びれですよ。
それも全体じゃなく一部で。
そこから算出された全長は21m。
「いや、最大で28mはあった」
「40mあったかもしれない」
との説も出て、
忘れられていたリードシクティスは、
史上最大の魚類であった可能性も出てきたのです。
28mでも、
最大の哺乳類シロナガスクジラ(約30m)に匹敵するデカさ。
恐竜でも、ほとんど見られないサイズですよ。
40mならとんでもない話です。
もちろん、現在までそんな巨大な魚は知られていません。
そこで気になるのはメガロドンです。
最強の魚類の名を欲しいままにしている巨大魚の王者。
メガロドン信者にとって、
突然出てきた、無名のリードシクティスに最大を奪われるなど屈辱でしょう。
メガロドンと比べることで、リードシクティスの実態も見えてくるかもしれません。
メガロドンとの比較
現代の巨大魚といえば、
ジンベエザメが14~18m。
次いで10mのウバザメ。
メガロドンに、
姿も生態も似ているというホホジロザメは、11mのものがいた記録はありますが、
平均は4~5mというところです。
サメ類は軟骨魚類で、化石は歯しか残りません。
メガロドンも歯しか残っておらず、
古くは「ドラゴンの歯」や「鬼の爪」と呼ばれたほど大きな歯。
その歯から、
メガロドンの大きさは15~20mと推測されているのです。
リードシクティスが20~40mとすれば、メガロドンとは大人と子供ほども違う。
メガロドン信者「ぐぬぬ……」です。
ただ、リードシクティスがいたのが、
今から1億5000年くらい前。
恐竜の時代!
中生代ですね。
メガロドンは1800万~150万年前の新生代ですから、直接対決はもちろんありません。
リードシクティスは巨大魚ですが、
その餌はプランクトンです。
ジンベエザメと同様に、
大きいだけで性格はおとなしく、甲冑魚のような防備もありません。
むしろ、自分より小型の魚、
おそらくメガロドンの先祖の、古代サメに捕食される立場だったようです。
メガロドンと戦っても、勝てる見込みはまったくないでしょう。
やはり最強はメガロドンです。
また、リードシクティスにも疑惑が生まれています。
20m、40m……
本当にそんなデカかったの?
都市伝説?
こんな動画が出回ってる程です。
たしかに、数字ばかりが取りざたされて、
リードシクティスの実像が見えてこない。
そちらも検証してみましょう。
実際はどうだったのか。
ジェフ・リストン氏の研究結果
化石の一部しか出てきていないリードシクティス。
そのため、どんな魚だったのかよく分かっていません。
想像の範囲内では、こんな風に思われていました。
サメなどと違い硬骨魚類ですから、サメのようなフォルムではない。
プランクトンを大量に取り込む大きな口を持ち、
サケとかイワナみたいな普通の形の魚が、
特大サイズになった感じと思われている。
だけどやっぱり、これらはあくまでも想像の域での話です。
「姿のわからない謎の巨大魚」
このフレーズが独り歩きしている状態です。
そこで、ブリストル大学の古生物学者、
ジェフ・リストン氏が改めて調査しました。
28mだの40mだのと言われたのは、発見された化石がまだ乏しかった頃。
2000年代には化石も少し増えていたので、より精密な調査ができるはずです。
その結果は……
「最小で7.9m。」
「最大で16.7m」
ありゃ、メガロドンより小さくなってしまった。
シロナガスクジラ並みという盛り上がりをどうしてくれるんでしょうか。
リストン氏が出した結論は次のようなものです。
リードシクティスの寿命は約40年。
20年で9mになり、40年で16mを超える。
さらに、
現在の大型海棲動物のシロナガスクジラ、
ジンベエザメのように、
プランクトンをろ過して食べるタイプの先駆けであったこと。
えらに、独特のハニカム構造のフィルターがあり、
効率的にプランクトンを濾していたことも分かりました。
思ったほど大きくなかったという結果で、
残念な魚みたいな印象ですが、なかなか興味深いところもある。
だけど、16mだとしても、ジンベエザメと肩を並べるデカさです。
リストン氏も「20mくらいの可能性もある」と含みを持たせており、
メガロドンにも負けていない。
最低でも、史上最大の硬骨魚ではあったのです。
(現在の最大硬骨魚は、10mにもなるリュウグウノツカイですよ)
しかも、リードシクティスが生きていたのは、
大型爬虫類の全盛期。
凶暴獣がウヨウヨしていた海で、十数メートルの巨体を手に入れ、
負けじと泳いでいた勇気は、メガロドンと並び称されてもいいものだと僕は思います。
最大サイズに成長すれば、大型爬虫類もおいそれと襲えなかったでしょう。
リードシクティスは決して、残念な魚なんかではなく、
ロマンをそそられるビッグフィッシュだったのです!
リードシクティスの大きさはメガロドンと同じ位~まとめ~
リードシクティスもメガロドンも化石が少なく、
推測部分の多い古代魚なのは否めません。
しかし、どちらも15m超の巨体の持ち主だった可能性が高い。
性質はずいぶん違いますが、どちらも魅力的な魚ですよね。
リードシクティスについて詳しくはわかっていませんが、
シロナガスクジラ、
ジンベエザメのようなライフスタイルの巨大魚の、
先駆者だったことは確かでしょう。
恐竜の時代には、ちょっと早すぎた平和主義だったかもしれません。
今は、その優しき巨大魚の姿を夢見るしかないのが残念です。