
歴史によく出てくる「紀元前」という言葉。
「紀元前○○年にナンチャラ文明が~」
ってやつ。
必死に暗記しましたよね。
もちろん「ネコは紀元前○○年頃にペットにされて~」など、
このサイトでもしばしば出てくる。
「時」の表記の前置きです。
ところが、この紀元前がわかりにくい。
「紀元前○○年」と言われても、
「昔だな~」とは思うけれど、
ざっくりした感覚じゃないですか?
時間を示す言葉なのに、ピンポイントで時代をイメージしにくい。
「昭和○○年」とか「江戸時代」なら、
雰囲気くらいは掴めるのに。
紀元前がわかりづらいのには、いくつか理由があります。
「紀元前があるのだから、紀元後もあって、ややこしい」
「前と後の切り替え点がよくわからない」
「どこからどこまで紀元前か曖昧」
「紀元前はマイナスの考え方になる」
などです。
ハッキリ言って、
紀元前・紀元後はとても面倒臭い数え方。
年号なんて、
未来に足し算していけばいいのに、
無駄な引き算まで加えている。
でも、世界共通の暦なのだから、知らないと困ってしまうんです。
今回は「紀元前って何なのさ?」
に答えてゆこうと思います。
目次
まずは西暦とは何かを知ろう!
紀元前・紀元後は西暦のことです。
普段「今年は西暦2022年」とか使う、
世界標準の「紀年法」。
紀年法というのは、年号の言い方、書き方のこと。
昭和や平成、
ガンダムの宇宙世紀○○年とかいうのも、
紀年法になります。
で、一番使われる紀年法が「西暦」になるわけです。
人間にとっての暦
人間は「時間を気にする」動物。
他の動物は、
「明るいか暗いか」
「そろそろ腹が減った」
くらいアバウトでいいのに、
人間だけは時間に名称をつけて、
必要に応じて区切り、常に「When」を確認しなくちゃならないのです。
そこで必要なのが、
「時計」と「暦(こよみ)」。
この2つがあれば、
何月何日の何時何分という、
「今」の時間の座標がわかる。
「そろそろ種まきしなきゃ」
とか
「明日は日曜日だ」
と教えてもらえます。
なので、人類は各国でいろいろな暦を作ってきました。
でも、各地でバラバラでは都合が悪い。
結果、世界共通の暦となったのが、
「西暦」というわけです。
西暦とは「西洋の暦」。
元はヨーロッパで使われていました。
太陽の動きを基準にした太陽暦です。
日本では、月が基準の太陰暦を使っていましたが、
欧米に合わせたほうがいいよねってことで、
明治5年から西暦に変わり、
現在に至るのです。
ただ、この西暦には奇妙な考え方があった。
長い歴史を、紀元前と紀元後で分けていたのです。
「なんで分けなきゃならんのだ?」
と思う。
それはいかにも、
ヨーロッパらしい理由でした。
紀元前はキリストの前だった!
僕らは普通に「西暦2022年」と使います。
これは正確に言うと、
「西暦の紀元後2022年」になる。
紀元が始まって2022年目ってこと。
つまり、
2023年前までは紀元前だったのです。
じゃあ、2022年前に何があったのか?
かなりグレートインパクトなことがあったから、そこで前後分けられているに違いない。
それは「イエス・キリストの誕生」です。
基準はキリストの前か後か。
西暦の成り立ち
西暦が作られたのは、
今から1500年くらい前。
当時のローマ教皇、ヨハネス1世の命令で、
神学者のディオニュシウス・エクシグウスが作りました。
「歴史はイエス様から始まったんだよ!」
「イエス様が基準の暦を作れや!」
「御意!」
って感じだったと思う。
「始まりはキリスト。その前なんざ歴史じゃねえ!」
という独善ぶりです。
エウシグウスは聖書を解析。
キリスト誕生を、
「525年前」と算出したのです。
これには諸説・異論もあるんですが、
そのときはそう決めた。
その年を「紀元1年」として、
100年目までを「1世紀」とする。
「今は6世紀の525年です」と決定。
そうやって数え始めたのが西暦。
キリスト暦ですから、
反対もなく普及しました。
「キリストさん、持ち上げすぎ」
って気もします。
しかし、キリストのためなら、
天動説まで嘘と決めつけた、
教会が支配していたヨーロッパ。
キリスト絶対主義は強いのでしょう。
神様の前は何があった?
日本でも似たような、
皇紀というのがあります。
初代・神武天皇が即位された年を、
1年目にして数える暦。
「西洋の神がキリストなら、日本の神は天皇陛下だ!」
ってわけ。
神様の登場がスタートという点は同じ。
西暦でいうと、
紀元前660年が皇紀元年に当たります。
ここで紀元前が出てきましたね。
神武天皇は、
(実在は定かではありませんが)紀元前の人物なのです。
他にも、ピタゴラスやアルキメデス。
プラトン、ソクラテス、イソップ。
アレクサンダー大王に、
ジュリアス・シーザー(カエサル)
釈迦、孔子、老子、太公望(呂尚)や始皇帝も、紀元前の人。
けっこうなビッグネームが、
名を連ねています。
これらの偉人たちは、
キリストより前の人物ということで、
西暦から外されてしまうことになる。
でも、なかったことにはできません。
どうしよう……?
そこで、キリスト誕生前を「紀元前」としました。
新歴史の前に、旧歴史を置くしかなかった。
紀元前は「B.C」と表しますが、
これは「Before Christ(キリスト以前)」
の略です。
キリストが基準なので、
紀元前はマイナスの考え方をします。
紀元前の数え方
年号に「0年」はありません。
キリスト誕生年が紀元(後)の1年で、
その前の年は、紀元前の1年になります。
これは数字のマイナスと考えると、
わかりやすい。
紀元前1年は、
キリスト生誕の「-1年」とするのです。
キリストを境に、
現在までの未来が「正の数」で、
過去は「負の数」になる。
紀元前は数字が大きいほど過去(古い)ということ。
図にすると
紀元前:「-1」「-2」「-3」……と過去へ
紀元後:「+1」「+2」「+3」……と未来へ
です。
ちょっと面倒に思えますが、
紀元前1年から何年前ということですから、
継続している時間では、
計算しやすいでしょう。
現代で一般的に使われている、
4桁の紀元後の西暦にも、
紀元前を付け加えることは可能です。
紀元後の数字に、紀元前の数字を足してやればいい。
例えば、
前例の神武天皇即位の紀元前660年。
「2022年」から見れば、
「2022+660」で、
「2682年前」となるわけです。
でも、まだ疑問がある。
紀元前がキリスト誕生の前年から、
1、2、3……
と過去に下ってゆくのはわかりました。
だけど、歴史は悠久の流れ。
紀元前1000年、1万年、100万年、
1億年……。
どんどんさかのぼってゆくことになる。
底なし沼に沈んでゆく、みたいな気がしませんか?
紀元前の範囲はどこまでなんだろう……?
紀元前はいつからいつまでか?
地球の歴史は46億年。
宇宙の歴史は150億年。
過去は途方もなく永い。
ビッグバンも地球誕生も、
紀元前の出来事です。
しかし、「宇宙は紀元前150億年に~」
とは言いません。
紀元前の終わりは、
「キリスト誕生の前年」
ではっきりしているのに、
始まりが不明です。
というか、キリスト基準にマイナスだから、
そもそも始まりがないのです。
これについても書き添えておきましょう。
人類の歴史の捉え方
紀元前の範囲は、特に決められていません。
しかし、
「恐竜は紀元前6500万年に滅んだ」
とか、
「生命の誕生は紀元前4千万世紀」
とは言いません。
間違っていないのですが、
数字が大きすぎて、
逆に混乱しちゃうでしょ。
○○年前と言うのが一般的ですね。
じゃあ、
どこまで紀元前表記が許されるのか。
紀元には、
新たな歴史が始まった
という意味があります。
西暦が「人間の暦」なら、
「どこからが人類の歴史」
が範疇になると思うのです。
そこで、候補を3つ選んでみました。
・石器時代が始まった200万年前から
・ホモ・サピエンスが登場した30万年前から
・文字で記録できるようになった1万年前から
個人的には、最後の1万年前が推しです。
ここが、人類の歴史のスタートと考えます。
化石や石器は「残ったもの」であって、
文字は未来に「残したもの」だから。
これこそ、歴史の始まりにふさわしい気がするんです。
「紀元前100世紀・1万年」
現在から約12000年前ですね。
この辺りが、
数字も大きすぎず、切れもよく、
「紀元前の始まり」
でいいと思うんですが。
<ザックリだけど分かりやすい人類の歴史>
もちろん、どこまで紀元前かは人それぞれ。
紀元前10万年、100万年でもいいんです。
悪魔であるデーモン小暮閣下も、
「吾輩は紀元前10万年生まれ」
と言っていますし。
悪魔もキリスト暦を使ってるんですね……。
わかりにくい紀元前ですが、
数え方を覚えてしまうと、歴史が身近に感じられます。
縄文遺構やピラミッドなど、紀元前の遺物も数多い。
決して別の歴史じゃなく、今と繋がった時代なのです。
遠い過去に親しんでみてはいかがでしょう。
紀元前と紀元後とは?キリスト誕生年が境目~まとめ~
紀元前について解説しました。
イエス・キリストを「始」とする「西暦」の誕生。
その前の歴史も無視できず、
作られた「紀元前」。
キリストさんを基準にしたため、
そこからマイナスしてゆく、
変な数え方をする。
しかし、その逆向きなところが、
過去に落ちてゆくみたいで、いいんですよ。
紀元前――そこは古く、暗い時代だったでしょうが、
どこか神話やファンタジーも感じられる。
巨獣がいて、巨石文明があり、
人と精霊が共存していたような、
面白そうな時代ですよね。